2022 Fiscal Year Research-status Report
ドーパミン作動神経下行性疼痛抑制系は運動療法による鎮痛機序に寄与するか
Project/Area Number |
20K09466
|
Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
谷口 亘 和歌山県立医科大学, 医学部, 客員研究員 (20453194)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山中 学 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (30597084)
西尾 尚子 和歌山県立医科大学, 医学部, 特別研究員 (40648359)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | ドーパミン / 運動療法 / 脊髄後角 / パッチクランプ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性疼痛患者に対する運動療法による鎮痛(Excise-induced hypoalgesia: EIH)のメカニズムに関して、未だ不明な点が多い。本研究ではEIHのメカニズムには脳内メカニズムのみならず、視床下部A11から脊髄後角細胞に投射しているドーパミン作動神経系による下行性疼痛抑制系が関連してるという仮説のもと、脊髄後角細胞にターゲットに解析を行った。昨年度は神経障害性疼痛モデルとしてSpared nerve injury (SNI)モデルを導入し、このモデル処置を行ったラット群にランホイールを用いた自由運動が出来る環境下での飼育を行った。このラット群から摘出作成した脊髄スライスにホールセルパッチクランプ法を適用した。記録膜電位を-70mVに固定し、脊髄後角ニューロンから各ドーパミン受容体作動薬による膜電位の変化を解析した。その結果、ドーパミンによる細胞膜の過分極をしめす細胞は約30%、 脱分極を示したのは約40%であり、D2受容体選択的作動薬であるQuinpiloleでは過分極を示す細胞は25%で脱分極を示したのは約40%であった。一方、D1受容体選択的作動薬であるSKF38393では過分極を示す細胞は約10%に対し、脱分極を示したのは約90%であった。本年度は、さらにSNIモデルラット運動群の脊髄スライスにドーパミンおよび各ドーパミン受容体作動薬を灌流投与した際の脊髄後角細胞の興奮性シナプス後電流(spontaneous excitatory postsynaptic current:sEPSC)の頻度・振幅の変化も解析したが各群間において有意な変化を認めるに至らなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請時の記載の実験計画書に従い、現在神経障害性疼痛モデルラットに自発運動を行わせたラット群の脊髄スライスからパッチクランプ法を用いた実験の解析を進めているが、興奮性シナプス後電流に関して当初想定した結果は得られていない。神経障害性モデルの作製に均一性がとれていない可能性もあり、現在抗腫瘍薬であるビンクリスチンによる神経障害性疼痛モデルラットによる実験も平行して実施しており、全体として当初の研究計画より進捗状況が遅れてしまっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に若干の変更・追加を行いながら、2022年の未完研究を早期に遂行したうえで、全体の研究を完遂する予定である。具体的には、神経障害性疼痛モデルラット(SNIモデルラット・抗腫瘍薬による疼痛モデル)に運動を行わせたラット群と運動をさせなかった非運動群とでパッチクランプ法にてデータを蓄積し、脊髄後角細胞の膜電位の変化、興奮性シナプス後電流の頻度・振幅の平均を比較する。また、ドーパミンサブ受容体関連の作動薬、拮抗薬の脊髄スライスへの投与でのそれぞれの変化についてもさらに検討する。さらにモデルラット作成時にD2-like受容体の拮抗薬を腹腔内投与あるいは脊髄内投与した影響下での解析を行なう予定。
|
Causes of Carryover |
研究計画と実際の進捗状況に誤差が生じたため、支出されなかった金額が生じた。本年度は残額を用いて、研究計画に従い、実験に必要な研究機器や動物・試薬等の消耗品に使用する予定。また研究成果に応じて、国内外での学会等で研究成果を発表・発信する
|