2022 Fiscal Year Annual Research Report
TGF-β2によるScx/Sox9共陽性細胞を標的とした腱板修復促進治療の開発
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20K09481
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
徳永 琢也 熊本大学, 病院, 特任助教 (60759520)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
唐杉 樹 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 講師 (80706482)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | rotator cuff / tendon-to-bone healing / scleraxis / sox9 / TGF-β2 |
Outline of Annual Research Achievements |
腱板縫合後の自然治癒能は乏しく,動物モデルの術後の腱骨間には脆弱な線維性組織が形成され,強度に優れた正常の腱板付着部構造である線維軟骨層の再生は困難とされている。近年,胎生期に転写因子のScleraxis(Scx)とSRY-box 9(Sox9)を共発現する腱付着部の前駆細胞(Scx+/Sox9+細胞)が見出された。また,マウス腱発生過程においてTGF-βシグナルは前駆細胞の動員を制御する因子の一つとして報告されている。 本研究では,腱板修復過程におけるTGF-β2のScx+/Sox9+細胞への影響とその修復促進効果を明らかにするために,野生型ラットとScxGFP Tgラットの腱板縫合モデルにTGF-β2を含浸した担体を投与し,修復過程を組織学的,力学的に評価した。術後6週の力学試験ではTGF-β2投与群(T群)と対照群(C群)の間に有意な差はみられなかった。最終年度では,ScxGFP Tgラットモデルを作製し,術後2週,4週の組織学的評価を行った。術後2週のT群では,残存した担体の周囲と上腕骨縫合部近傍に層状に分布するScx+細胞を認め,骨近傍に少数のScx+/Sox9+細胞が認められた。C群では担体周囲のScx+細胞は目立たなかったが,骨表層には同様に少数のScx+/Sox9+細胞が認められた。術後4週では,両群でSox9+細胞,Scx+/Sox9+細胞は減少し,両群の術後4週までに線維軟骨層の再構築はみられなかった。また,両群の修復組織中に多数のpSmad3陽性細胞がみられ,内在性のTGF-βシグナルの存在が示唆された。本研究では,TGF-β2の局所投与によるScx+/Sox9+細胞の動員促進や線維軟骨層修復および力学強度の上昇の作用はみられなかった。その一因として,TGF-βシグナルに応答し,修復に寄与する内在性の未分化間葉系細胞の不足の可能性が示唆された。
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