2022 Fiscal Year Research-status Report
テネイシンC・シンデカン4・フィブロネクチンの軟骨に対する作用とシグナル伝達機構
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20K09500
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
長谷川 正裕 三重大学, 医学系研究科, 准教授 (40308664)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 恭子 (今中恭子) 三重大学, 医学系研究科, 教授 (00242967)
須藤 啓広 三重大学, 医学系研究科, 教授 (60196904)
吉田 利通 三重大学, 医学系研究科, リサーチアソシエイト (80166959)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 関節軟骨 / 変形性関節症 / シンデカン / フィブロネクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
シンデカン4は変形性関節症(OA)の軟骨組織において高発現する。OAにおいて、シンデカン4の細胞外ドメインはmatrix metalloproteinase (MMP)等によりコアタンパク部で切断(shedding)されて関節液内に放出される。軟骨細胞に対するシンデカン4細胞外ドメインの作用を評価するために、人工膝関節置換術を受けた患者の組織から軟骨細胞を単離培養した。リアルタイムPCRにおいて、シンデカン4添加で、TIMP 3は有意に増加しADAMTS 5、MMP 13は有意に減少した。マウス膝の前十字靭帯、内側側副靭帯を切離したOAモデルの膝関節内にシンデカン4を関節内注射すると、術後6週、8週でOA進行の抑制効果を認めた。 シンデカン4は細胞外マトリックスであるテネイシンCやフィブロネクチンと結合することが知られている。関節軟骨において、シンデカン4、テネイシンC、フィブロネクチンがどのような作用があるか検討した。テネイシンCのドメインであるTNIIIA2は軟骨細胞のβ1インテグリンを活性化させることを認めた。β1インテグリンの活性化は軟骨細胞において、Ⅱ型コラーゲンやアグリカンの発現を促進し、TNIIIA2の関節内投与により軟骨全層欠損モデルマウスの軟骨修復が促進された。 人工膝関節置換術を受けた患者の組織から軟骨細胞を単離培養し、フィブロネクチンのドメインであるFNIII14を添加した。なお、FNIII14はテネイシンCのドメインであるTNIIIA2に対して、拮抗作用を示す。FNIII14添加でβ1インテグリン活性が低下し、細胞増殖が抑制された。TUNEL assayでアポトーシスを示す陽性細胞の割合が上昇した。リアルタイムPCRにおいて、FNIII14添加でCOL2A1、ACAN、SOX9の発現が有意に減少し、TNF-α、IL-1βの発現が有意に上昇した。すなわち、フィブロネクチンのFNIII14単独投与では、軟骨細胞のβ1インテグリンの活性を低下させ、細胞増殖抑制とアポトーシスを誘導することを認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テネイシンCのドメインであるTNIIIA2は軟骨細胞のβ1インテグリンを活性化させることを認めた。また、フィブロネクチンのドメインであるFNIII14投与では、軟骨細胞のβ1インテグリンの活性を低下させ、増殖抑制とアポトーシスを誘導することを認めた。
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Strategy for Future Research Activity |
シンデカン4、テネイシンC、フィブロネクチンの相互作用があるかどうかを評価する。シンデカン4とテネイシンCの相互作用は、軟骨変性抑制、修復に対しては良い結果が得られる可能性がある。一方、フィブロネクチンは軟骨のアポトーシスを誘導することより、シンデカン4とフィブロネクチンの両者を用いると、軟骨変性抑制、修復に対しては有用でない可能性が考えられる。シグナル伝達機構の解明も行う予定である。 シンデカン4、テネイシンC、フィブロネクチンが変形性関節症発症、予防、治療において、どのような役割があるか検討する。
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