2020 Fiscal Year Research-status Report
生体と類似構造を有する三次元骨軟骨組織を用いた新規変形性関節症治療法の開発
Project/Area Number |
20K09504
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
下村 和範 大阪大学, 医学系研究科, 招へい教員 (40755998)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松崎 典弥 大阪大学, 工学研究科, 教授 (00419467)
中村 憲正 大阪大学, 国際医工情報センター, 招へい教授 (50273719)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 変形性関節症 / 整形外科 / 骨軟骨組織 / 血管網 / 骨軟骨再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
変形性関節症は患者QOL を著しく損なうが、未だに有効な治療法は無いのが現状である。我々は、細胞の種類や配置を三次元的に積層させる技術を開発し、様々な体細胞や幹細胞と血管やリンパ管を組み合わせ皮膚、心筋、胎盤、癌転移モデルなど生体に類似した三次元組織の作成に成功している。これらの技術を応用し、生体内構造・機能を模した三次元骨軟骨モデルの作成を目指している。今年度は、以下の実験を行い成果を得た。まず軟骨層の作成のため、人工膝関節置換術で得られたヒト軟骨組織を用い、ヒト軟骨細胞を分離し、実験に用いた。三次元構造を得るために、様々なバイオマテリアルを比較・検討したが、軟骨基質に模して開発した光硬化性ハイドロゲルに2型コラーゲンを混和したものを細胞外基質として使用することで、より硝子軟骨に類似した三次元組織が作成できた。次いで、血管網を有する三次元骨組織の作成では、骨組織と同様の細胞外基質である1型コラーゲンを用い、ヒト間葉系幹細胞およびヒト臍帯静脈内皮細胞を共培養することで三次元的な血管網の作成に成功している。今後、骨芽細胞の導入を予定しており、三次元骨組織を完成させ、さらに、軟骨組織と組み合わせることで、三次元骨軟骨組織の作成を予定している。今年度の成果を元に、これまでに無かった、血管網を有する、生体内と類似した三次元骨軟骨組織作成を目指す。さらに本三次元モデルを応用することで、変形性関節症治療薬の開発基盤の作成、さらに本技術を用いた新たな関節再生治療法の開発が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上述の三次元軟骨組織の作成では、より生体内構造に近づけるために、細胞外基質の候補として、様々な素材を比較検討した。ベースとなるゲルとして、コラーゲンゲルおよび軟骨基質に模して開発した光硬化性ハイドロゲルを用意し、またこれらのゲルに対し、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、2型コラーゲンなどの材料とともにヒト軟骨細胞と混和したのちに、培養、生化学的、組織学的に評価を行った。各材料の比較検討にて、より軟骨細胞の形態を維持し、軟骨としてのphenotypeを示すものとして、ハイドロゲルおよび2型コラーゲンの組み合わせが最良と考えられた。さらに三次元的な血管網の形成として、コラーゲンの濃度・準備方法、細胞濃度、比率などの検討を行い、安定して三次元組織の作成が可能となった。 一方、これらの検討に際し、様々な条件、素材の組み合わせの比較検討を行ったため、予想より時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は、前述の三次元軟骨組織、血管網の検討・作成に時間を要したため、令和3年度は、まず血管網を有する三次元骨組織の作成を目指す。基盤となる三次元血管構造の作成に成功しているため、骨芽細胞の導入または間葉系幹細胞を用いた骨分化を行うことで三次元骨組織の作成を行う。また、より生体内骨組織に近づけるため、基質内へのハイドロキシアパタイトの混和も検討する。次いで、軟骨組織と組み合わせ、三次元骨軟骨組織の作成を目指す。 さらに、三次元骨軟骨組織に対し、炎症性サイトカイン(IL-1βなど)を投与し、関節炎を惹起、軟骨層へ変性をきたすがどうか検討する。組織学的に、軟骨層の破壊、血管侵入(血管層の拡大)を評価し、合わせて、正常三次元組織との比較にて遺伝子発現の評価を行う(軟骨形成マーカー:col2A1, sox9, Aggrecan, 軟骨変性・破壊マーカー: col10, MMP-1, 3, 13, ADAMTS-5, 骨形成マーカーRUNX2 など)。また別法として、変形性関節症の病態である軟骨破壊、血管侵入を反映して、軟骨層を薄く、血管層を厚くした三次元モデルの作成も行う。さらに、これらのモデルが関節症を反映しているかどうか検討するために、動物関節症モデル(マウス膝関節靭帯切離モデル等)を比較対象とし、組織学的検討、生化学的検討(遺伝子発現など)を行う。
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Causes of Carryover |
予定していた学会参加が、コロナウイルス感染症の影響で不参加となり、旅費の使用が減少したため。
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