2023 Fiscal Year Research-status Report
変形性膝関節症におけるS-ニトロソグルタチオン還元酵素と自然免疫系細胞の役割
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20K09512
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
成尾 宗浩 日本医科大学, 大学院医学研究科, 研究生 (00772310)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥田 貴久 日本大学, 医学部, 教授 (20620305)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | S-ニトロソグルタチオン還元酵素 / ClassⅢアルコール脱水素酵素 / 変形性関節症 / HIF2α / I型コラーゲン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では低酸素反応因子HIF2αとS-ニトロソグルタチオン還元酵素(GSNOR)の作用に注目している。GSNORの欠損がHIF2αのニトロソ化修飾(HIF2α-SNO)の増加をもたらし、これがOAの発症にどのような影響を与えるかを分析する。2021年から2023年にかけて、GSNORがClass IIIアルコール脱水素酵素(ADH3)として機能し、非特異的に全組織に存在する特性を利用して、10%エタノールを投与した雌C57BL/6マウス(Alc群)の大腿骨遠位端からmRNAを抽出し、リアルタイム定量的PCRで骨代謝関連のmRNAの発現頻度を群間比較した。Alc群では骨吸収に関連するする遺伝子発現頻度が増加しており、細胞解析からはNKT様細胞の機能低下と、抗炎症サイトカインIL-4の産生減少が骨吸収を促進していることが確認された。この結果を元に、ADH3ノックアウトマウス(ADH3KO)を準備し、外来物質を投与しない条件下で長管骨形態解析を追加した。先行研究では、雄C57BL/6マウス のADH3欠損は間葉系幹細胞を骨形成分化に傾斜する一方、個体レベルでは骨吸収優位の表現型を呈し乖離がみられる。われわれのモデルでは、長幹骨骨梁密度は増加する一方でCT値から算出した仮想骨強度は低下した。また、骨吸収およびコラーゲン産生に関与する遺伝子発現頻度に変化はない一方、石灰化に関与する遺伝子発現頻度が上昇した。透過型電子顕微鏡ではコラーゲン線維束の粗造化と配列の単純化が確認された。細胞解析では、軟骨細胞内のHIF2αは有意に増加していた。これらの結果から、雌マウスにおいてはADH3は石灰化および骨基質のコラーゲン配向性を適正に保ち、骨強度の恒常性維持に重要な役割を担っていることが示唆された。また、内軟骨骨化の亢進を示唆するHIF2αの増加は、骨硬化を誘導する背景因子として重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまでの研究結果から、GSNORノックアウトマウスとC57BL/6ワイルドタイプマウスの下肢骨に骨強度の差異があることが示されている。in vivoでの骨微細構 造を解析する目的で、大腿骨骨幹部皮質骨の電子顕微鏡解析を追加した。現段階では、コラーゲン線維の配向性を決 定づける因子を検索中である。加えて、骨形成遺伝子群のエピジェネティクス解析に必要なバイオインフォマティクスの解析技術を習得中のため、当初の予定より時間を要している状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、GSNORによるHIF2αのSNO化を介した病的な内軟骨骨化および骨形成の亢進を解明することである。現在まで得られている研究結果は、1NKT様 細胞が産生するIL-4を介した破骨細胞成熟ならびに骨粗鬆症の伸展、2GSNORによる皮質骨強度の維持 の2点であるが、GSNORとHIF2αを結びつけるのに必要な 特定蛋白のSNO化解析が課題として残っている。また、HIF2α-SNO化の定量と同時に、次世代シーケンサ―を用いてGSNORノックアウトマウスにおける骨形成関連遺伝子のエンハンサー、プロ モーター領域のエピジェネティクス解析を通じて、HIF2α-SNO化の定量と遺伝子発現頻度との関連を調査していく予定である。
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Causes of Carryover |
昨年と同様にGSNORの欠損により誘導されるHIF2α-SNOの質量分析器を使用した解析を追加した。また、次世代シーケンサーにより骨形成関連遺伝子座のディープシーケンスを行い、エンハンサー、プロモーター領域のエピジェネティクス解析を計画した。これらの追加実験により、次年度使用額が発生した。
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