2020 Fiscal Year Research-status Report
変異SETD2の機能喪失メカニズムの解析と腎癌に対する免疫療法への応用
Project/Area Number |
20K09550
|
Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
稲元 輝生 大阪医科大学, 医学部, 准教授 (20330087)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東 治人 大阪医科大学, 医学部, 教授 (40231914)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 腫瘍学 / 腎細胞癌 / 免疫療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
転移性の腎細胞癌(aRCC)に対する免疫チェックポイント阻害薬 immune checkpoint inhibitor (ICI) は生存延長のメリットから内外のガイドラインで高い推奨度を付与されている。しかし、ICIはいずれも奏効率が4割に達することはまれで治療効果の底上げが必要である。BRAFに対する阻害薬の併用で免疫療法の治療効果の向上がメラノーマでは実現されている一方で、腎癌はBRAFの変異がなく、アプローチを変える必要がある。本研究では腎癌の遺伝学的背景が検索可能な7つのコホート研究からバイオインフォマティクスのツールを用いて患者生存を予測するターゲットを絞り機能解析を行い、対象遺伝子SETD2に着目した。
ヒストン3(H3K36me3)のリジン36トリメチル化を触媒するSETD2欠損が、CD4-CD8-DN3期の胸腺細胞の重度の発達障害を引き起こし、このSETD2欠損はTCRβH3K36me3を減少させ、TCRβ遺伝子座とDNA二本鎖切断修復へのRAG1結合を損なうことでTCRβV(D)Jの再配列を抑制することが明らかになった(Nat Commun. 2019; 26: 3353)。このことはSETD2が最適なV(D)J組換えと正常なリンパ球の発達に必要であることを示している。T細胞上のTCRの発現を制御するSETD2はICI治療の成否を決定することが容易に想像されるが、腎癌組織での高いSETD2の発現と高い変異体の存在に注目し本研究では、ICI治療における治療を腫瘍細胞側のSETD2が制御する可能性を示すことにある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腎癌、特にaRCCでのICI治療を受けた患者での治療抵抗群の遺伝子変異同定からその機能解析まで証明した論文は現状で1報のみある(Science 2018; 359:801)。35例のICI治療を施行されたccRCCの患者組織で全エクソーム解析がなされ、ICI治療の抵抗性を司る遺伝子が同定された (Science 2018; 359:801)。我々は同コホートを見直し、10%以上の頻度で遺伝子変異を来す上位の遺伝子(VHL;71.40%、PBRM1;57.10%、SETD2;42.90%、KDM5C;20.00%、TTN;17.10%、CACNA1I;17.10%、BAP1;14.30%、DYNC1I1;11.40%、MTOR;11.40%)に関して1744人(1813検体)のccRCCデータベースを包括的に解析して、遺伝子変異体がccRCC患者の生存に与えるインパクトを評価し、腎癌での体性変異が最も患者生存に与えるインパクトはSETD2が最も高かった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、大規模データベースの解析を中心に行うが、並行して以下の研究を進めていく予定である。
-SETD2変異と低メチル化 -SETD2の機能解析 -免疫能保持マウスモデルを使用した腫瘍微小環境からの免疫細胞排除モデル
|
Causes of Carryover |
本年度は、データベース解析が中心であった。大規模データベースからの数値データダウンロードと解析には追加費用が発生せず次年度に研究資金を繰り越すことが可能となった。研究自体は予定通り行う見込みである。
|
Research Products
(1 results)