2021 Fiscal Year Research-status Report
変異SETD2の機能喪失メカニズムの解析と腎癌に対する免疫療法への応用
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20K09550
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Research Institution | Osaka Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
稲元 輝生 大阪医科薬科大学, 医学部, 准教授 (20330087)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東 治人 大阪医科薬科大学, 医学部, 教授 (40231914)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 転移性腎癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
aRCCに対するICIとして、本邦において抗PD-1抗体ニボルマブが二次治療に、CTLA-4抗体であるイピリムマブとの併用療法がIMDC intermediate/poorリスクのaRCCに対する1次治療に承認され、欧米で抗PD-1抗体であるペンブロリズマブやアベルマブなどのICIが既に臨床で使用されている。ICIはTKIと異なり一度奏功すれば持続的な治療効果を来し、全生存期間(OS)を増加させる。しかし、効果を示す症例は全体の3割台にとどまり、大多数の患者がこの治療の成果を享受出来ずに終わる。そのため、治療効果向上を目指したICIとTKIを1次治療で併用する複合免疫療法の検討も行われていて、現代の腎癌治療の主役は免疫療法である。ソラフェニブは現在でも腎癌治療におけるBRAFにへの効果を有する唯一のTKIである。他癌種ではソラフェニブはBRAF・CRAFの二量体化を促進し、活性化された CRAF が濃度・時間依存性に MAPK を活性化することが報告されている。腎癌におけるBRAFの特異性、特にaRCCにおいてはBRAF阻害に関する論文は皆無である。これはメラノーマで臨床応用できる経路が腎癌では動いていないことに起因する。複数のデータベースからの臨床および実験データを包括的に解析し、BRAFのaRCC予後に与える評価を行ったところ、膀胱癌・乳癌・子宮頸部扁平上皮癌・食道癌・頭頸部扁平上皮癌・ccRCC・乳頭状腎細胞癌・肺腺癌・肺扁平上皮癌・膵管腺癌・直腸腺癌と11の悪性腫瘍では生存がよいグループでBRAFの発現が逆説的に上昇していること発見し、さらにこの中で、ccRCCが最も低いハザード比となることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
転移性腎細胞癌の最も使用経験が長いソラフェニブの大規模なプール解析を行った。ソラフェニブはVEGFRに加え、Raf阻害作用を有するマルチキナーゼ阻害剤であり、免疫チェックポイント時代においても進行性腎癌患者において重要な役割を果たす事が期待される。日本において2008年2月から2009年9月にソラフェニブ製造販売後調査(PMS)に登録され、組織学的または細胞学的に確認された切除不能または転移性腎細胞癌患者3,422例を対象とした。ベースラインのデータとして心血管系疾患(CVD)データを有する2019例で傾向スコア解析を施行した。薬剤投与状況、 有害事象 (AE)、 抗腫瘍効果、 無増悪生存期間 (PFS)、 及び全生存期間について解析した。 奏効率(ORR)及び病勢コントロール率(DCR)は両群間で類似していた。奏効率(ORR)は非CVD群で27.8%、CVD群で26.7%、病勢コントロール率(DCR)は非CVD群で86.8%、CVD群で85.6%であった。 1日投与量中央値および治療期間中央値に有意差は認められなかった。高血圧の発現に関して、全体の発現率は両群間で同様であったが、重篤な事象の発現率のみCVD群で有意に高かった。(p=0.0261)無増悪生存期間(PFS)の中央値は 非CVD群(225日) 、CVD (208日) であり2群間で類似していた。 (Hazard Ratio: 1.047, 95%CI 0.899 ‐1.219) IMDCリスク分類別の無増悪生存期間(PFS)は、各リスク分類において非CVD群、CVD群間に有意な差は認められなかった。本試験結果から、ソラフェニブは併存疾患としての心血管疾患の有無に関わらず、腎細胞癌患者において臨床的に有用である事が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
ICIはいずれも奏効率が4割に達することはまれで治療効果の底上げが必要である。BRAFに対する阻害薬の併用で免疫療法の治療効果の向上がメラノーマでは実現されている一方で、腎癌はBRAFの変異がなく、アプローチを変える必要がある。バイオインフォマティクスのツールを用いて患者生存を予測するターゲットを絞り機能解析を行い、がん抑制遺伝子と考えられる新規分子の癌細胞内での機能欠損変異により腫瘍微小環境へのT細胞浸潤が減少するコールドな腫瘍となることを示したい。
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Research Products
(3 results)