2022 Fiscal Year Research-status Report
変異SETD2の機能喪失メカニズムの解析と腎癌に対する免疫療法への応用
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20K09550
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Research Institution | Osaka Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
稲元 輝生 大阪医科薬科大学, 医学部, 准教授 (20330087)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東 治人 大阪医科薬科大学, 医学部, 教授 (40231914)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 転移性腎癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
免疫チェックポイント阻害薬 immune checkpoint inhibitor (ICI) として、2016年8月に本邦において抗PD-1抗体ニボルマブが2治療以降に保険適用となり、2018年8月にはニボルマブと抗CTLA-4抗体であるイピリムマブの併用療法がIMDC intermediate/poorリスクの腎癌に対する1次治療に承認された。さらに抗PD-1抗体であるペンブロリズマブやアベルマブなどのICIが海外で臨床に使用されている。ICIはTKIと異なり奏功すれば持続的な治療効果を来し、全生存期間(OS)を増加させる。しかし、効果を示す症例は全体の凡そ3割弱にとどまり、大多数の患者がこの治療の成果を享受しないままに終わっている。そのため、治療効果向上を目指したICIとTKIを1次治療で併用する複合免疫療法の検討も行われている現状がある。SETD2は、ヒストンH3の36番目のリジン残基 (H3K36)特異的なトリメチル化に働くリジンメチル基転移酵素であり、転写調節に関与する。またSETD2によるH3K36のトリメチル化は、DNA二本鎖切断が起きた際の相同組み換え修復の初期反応に必要なLEDGFをクロマチンへ動員することで、修復反応の促進に関与するものである。われわれば腎癌の生存とSETD2変異の関連性を大規模データベースを応用して確認するに至った。TCRのV(D)J再構成がエピジェネティックにコントロールされる機構にSETD2が関わることが明らかになった(Nat Commun. 2019; 26: 3353)。ヒストン3(H3K36me3)のリジン36トリメチル化を触媒するSETD2欠損が、CD4-CD8-DN3期の胸腺細胞の重度の発達障害を引き起こし、このSETD2欠損はTCRβH3K36me3を減少させ、TCRβ遺伝子座とDNA二本鎖切断修復へのRAG1結合を損なうことでTCRβV(D)Jの再配列を抑制することが明らかになった(Nat Commun. 2019; 26: 3353)。このことはSETD2が最適なV(D)J組換えと正常なリンパ球の発達に必要であることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腎癌、特にaRCCにおいてはBRAF阻害に関する論文は皆無である。これはメラノーマで臨床応用できる経路が腎癌では動いていないことに起因する。我々はTCGA、cBioPortal、およびKaplan-Meier Plotterを含む複数のデータベースからの臨床および実験データを包括的に解析し、BRAFのaRCC予後に与える評価を行ったところ、膀胱癌・乳癌・子宮頸部扁平上皮癌・食道癌・頭頸部扁平上皮癌・淡明細胞型腎細胞癌(ccRCC)・乳頭状腎細胞癌・肺腺癌・肺扁平上皮癌・膵管腺癌・直腸腺癌と11の悪性腫瘍では生存がよいグループでBRAFの発現が逆説的に上昇していることを示す。さらにこの中で、ccRCCが最も低いハザード比となることをに着目した。
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Strategy for Future Research Activity |
7つのccRCCに限定した研究から1813検体のデータベースを包括的に解析したところ驚くべきことにccRCCにおけるBRAF変異体は、複数のサンプルを持つ患者で1つの重複変異を含む3つのミスセンス変異と3つのtruncating変異(2つのフレームシフト挿入と1つのスプライスサイト)の合計6つの変異体しかないことが判明した、メラノーマで有名なキナーゼドメインの変異はわずかに1症例しかなかった(図1)。Pan-cancer RNA-seq解析で生存曲線をプロットすると、530症例のccRCCで逆説的に突然変異体の有無によらずBRAF遺伝子発現群がむしろ予後良好となった(図2)。これらの包括的データ解析から腎癌ではメラノーマと全く異なったアプローチでICI治療の効果を上昇させる必要があることになる。aRCCでのICI治療を受けた患者での治療抵抗群の遺伝子変異同定からその機能解析まで証明した論文は現状で1報のみある(Science 2018; 359:801)。35例のICI治療を施行された35例の患者組織で全エクソーム解析を施行し、クロマチンの調節に関わるPBAF複合体のメンバーをコードするPBRM1遺伝子の機能喪失変異(P = 0.012)がICIの効果良好群となることが示された(Science 2018; 359:801)。我々は同コホートを見直し、10%以上の頻度で遺伝子変異を来す上位の遺伝子(VHL;71.40%、PBRM1;57.10%、SETD2;42.90%、KDM5C;20.00%、TTN;17.10%、CACNA1I;17.10%、BAP1;14.30% DYNC1I1;11.40%、MTOR;11.40%)を1744人(1813検体)のccRCCデータベースを包括的に解析して、遺伝子変異体がccRCC患者の生存に与えるインパクトを評価する。
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Causes of Carryover |
次年度に、大規模データベースの解析を用いた腎癌と各関連分子mutationを生存に関連付けた解析を行う見込みである。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Serum C-reactive Protein Level Predicts Overall Survival for Clear Cell and Non-Clear Cell Renal Cell Carcinoma Treated with Ipilimumab plus Nivolumab.2022
Author(s)
Yano Y, Ohno T, Komura K, Fukuokaya W, Uchimoto T, Adachi T, Hirasawa Y, Hashimoto T, Yoshizawa A, Yamazaki S, Tokushige S, Nishimura K, Tsujino T, Nakamori K, Yamamoto S, Iwatani K, Urabe F, Mori K, Yanagisawa T, Tsuduki S, Takahara K, Inamoto T, Miki J, Kimura T, Ohno Y, Shiroki R, Azuma H.
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Journal Title
Cancers
Volume: 14
Pages: 5659-69.
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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