2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K09557
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
宗 修平 浜松医科大学, 医学部, 特任助教 (30647607)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高久 康春 浜松医科大学, 光尖端医学教育研究センター, 特任研究員 (60378700)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 精子形態 / 走査型電子顕微鏡 / ナノスーツ / 男性不妊症 |
Outline of Annual Research Achievements |
精子の形態評価は男性不妊症を特徴づけるために重要な検査である。しかし、その診断のほとんどは低分解能な光学顕微鏡下で行われているため、精子の微細な表面構造を正確に評価できない。また、精子形態評価に高分解能な電子顕微鏡を用いた場合でも、従来の観察方法では試料の化学固定や脱水処理、凍結乾燥などの操作により、本来の形態情報が消失している可能性が危惧される。一方NanoSuit法は細胞外物質やそれを模倣した物質を電子線重合させ、高真空下において細胞の乾燥を防ぐことで、生きたままの形態情報を保持した細胞を電界放出形走査電子顕微鏡(FE-SEM)により観察することを可能にする新しい電子顕微鏡観察法である。本検討ではこのNanoSuit法を精子に適応させ、その有用性を評価した。その結果、NanoSuit法により未固定の精子試料の精子頭部(アクロソーム領域、赤道領域、ポストアクロソーム領域)、頚部、中片部、尾部の超微細形態をFE-SEMで高い解像度で評価できた。透過型電子顕微鏡観察を通してNanoSuit法試料で精子表面に50 nmの薄いNanoSuit膜の存在を確認した。また従来法試料でみられる精子頭部の収縮はNanoSuit法試料では認めなかった。さらに未固定の精子表面の性質を評価するために用いられる小麦胚芽レクチン(WGA)の結合は従来法試料ではなく、NanoSuit法により作製されたFE-SEM試料でのみ認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生きた状態のまま電界放出型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)による観察が可能な新技術(NanoSuit法)を用いて、未固定・未処理の精子の表面構造を高い分解能で特徴づけることに成功した。またNanoSuit法によって作製された試料は従来法試料に比し、アーティファクトが少ないことが示唆された。精子試料に適したNaoSuit法による試料作製条件を確立できたことから、現在、これらの条件の下で男性不妊症患者における精子表面構造の評価に取り組んでいる。研究の進捗状況は、おおむね当初の計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、前年度までに確立した手法を用いて、NanoSuit法を用いた男性不妊症患者の精子形態評価を実施していく。さらに、我々はNanoSuit法にエネルギー分散型X線分析(EDS)法を組み合わせた新技術により、未固定精子の元素分布の評価を可能にしていることから、精子間もしくは患者間における検出元素のパターンを指標とし、不妊症男性の特徴づけを行う。そして、これら精子形態や元素レベルの特徴が受精率等に関連しているかどうかを調べていく。また、また、検査の手軽さを目指し、大型で高価なFE-SEMに代わる選択肢として、小型で比較的安価な卓上SEMにおいてこれらの評価が可能かどうかを検討する。
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Causes of Carryover |
研究の展開により初年度に購入を予定していた試薬を次年度以降に購入することになったため繰り越し金が生じた。
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