2020 Fiscal Year Research-status Report
前立腺癌AR-V7標的遺伝子の同定を目的とした網羅的エピゲノム解析
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20K09572
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
今村 有佑 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (10568629)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂本 信一 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (70422235)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 前立腺癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
前立腺癌の治療としてアンドロゲン除去療法が初期には有効であるが、去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)への進行が臨床的問題である。CRPCにいたる分子機構の一つにアンドロゲン受容体(Androgen Receptor;AR)のリガンド結合部位が欠失したSplicing Variants、特にAndrogen Receptor Splicing Variant7(AR-V7)の異常発現が注目されているがAR-V7の役割については不明な点が多い。そこでAR-V7標的遺伝子の解明およびCRPCに対する新たな治療戦略の設立を目的として、次世代シーケンサーを用いたRNA-seq法、ChIP-seq法により遺伝子発現およびAR結合部位、AR-V7結合部位、ヒストン修飾変化の統合解析を行い、AR-V7下流標的遺伝子とその制御を網羅的に同定し、これら下流標的遺伝子の機能解析を行うことを目的とした。 令和2年度はARを発現するLNCaP細胞株およびAR-V7を発現するLNCaP95細胞株を用いて、AR/AR-V7抗体ならびにヒストン修飾(H3K4me1,H3K4me3,H3K27ac)に対する免疫沈降(ChIP)を行い、次世代シーケンサー(NGS)を用いた網羅的解析(ChIP-seq)により、ゲノムワイドなAR, AR-V7の標的遺伝子を解明することを試みた。具体的にはLNCaPとLNCaP95における候補遺伝子の発現の比較検討を行い、実際にLNCaP95において発現上昇している候補遺伝子についての絞り込みを行った。 また、臨床検体の準備として千葉大学泌尿器科において前立腺生検および前立腺全摘術にて摘出された標本、さらには患者血清を対象として、検体収集を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
LNCaP細胞株およびLNCaP95細胞株を使用しテストステロン欠乏状態においてAR-V7も認識するN末端認識のAR抗体を用いてChIPを行ったところ結合箇所が274箇所から550箇所に増加する結果を予備実験にて得ており、またヒストン修飾について、これら増加したAR結合箇所の活性化マークであるH3K27ac、ならびにエンハンサーマークであるH3K4me1のpeakの増加が認められていたが、次世代シーケンサーでの解析(ChIP-seq)用に収集したサンプルでは同様の結果が得られず、予備実験から再検討が必要であった。 また、臨床検体の準備として、特に患者血清に関し保存状態の調査が必要であり、各患者における検体が使用可能かどうかの調査、さらには使用可能な検体の患者情報として、病期、治療情報等の臨床情報の収集が必要であった。
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Strategy for Future Research Activity |
次世代シーケンサーでの解析(ChIP-seq)を再度行い、発現上昇している候補遺伝子についての絞り込みを再現性をもって行う。また網羅的エピゲノム解析として、LNCaP95細胞株においてshRNAによってAR-V7をノックダウンし、RNAシーケンスによる網羅的発現解析を行う。具体的には同定したAR-V7下流標的遺伝子のうち、AR-V7ノックダウンによって著名に発現低下した遺伝子の同定を行う。さらに、同定したAR-V7標的遺伝子についてLNCaP、LNCaP95、AR-V7をノックダウンしたLNCaP95細胞におけるChIP-seqならびにRNA-seqデータを使用し、ヒストン修飾も含めた機能変化について統合的解析を行う。 また機能解析として、TCGA、Grasso等の公共データベースを使用し、AR-V7高発現前立腺癌において同定したAR-V7標的遺伝子が発現上昇しているか解析を行う。またAR-V7標的遺伝子に対しノックダウンもしくは遺伝子強制発現により機能解析を行い、新たな治療標的となり得るドライバー標的遺伝子の同定を試みる。またドライバー遺伝子に対する薬剤の抗腫瘍効果を判定し、新期治療標的としての可能性を検討する。さらにFlow cytometryを使用し薬剤による細胞周期の変化やアポトーシス誘導に関して解明する。 また、臨床検体については、引き続き使用可能な検体の是非の判断、さらには病期、治療情報、治療反応性、予後などの臨床情報を収集し患者検体と臨床情報の照らし合わせを引き続き行っていく。そのうえで収集済みの組織において機能解析を行ったドライバー標的遺伝子のコードするタンパクの免疫組織学的解析および組織中の発現解析を行う。また当科の臨床データを用いて予後との関連を解析する。
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