2020 Fiscal Year Research-status Report
腎移植患者における感作状態を評価するB細胞系マーカーの探索と臨床的応用
Project/Area Number |
20K09587
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Research Institution | Osaka General Medical Center |
Principal Investigator |
角田 洋一 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪急性期・総合医療センター(臨床研究支援センター), 泌尿器科, 副部長 (40710116)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 腎移植 / 感作歴 / 抗体関連型拒絶反応 / B細胞 / 脱感作療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
ラット抗体関連型拒絶反応モデルを用いたB細胞活性化の評価と、移植前に脱感作状態であった腎移植患者のデータを用いてB細胞が感作された状態が臨床結果に与える影響の評価を行った。 当初はラット腎移植感作モデルを用いて腎移植を行い、前感作状態、感作状態、腎移植後におけるB細胞の活性化を評価し、そのバイオマーカーを探索する予定であったが、新型コロナウイルス蔓延による実験制限のため、ラット腎移植感作モデルの作成・評価が大幅に遅れているため、前感作状態、腎移植後(ラット抗体関連型拒絶反応モデル)を用いた評価を行った。ラット抗体関連型拒絶反応モデルとは皮膚移植を行い、2週間後に腎移植を行うというモデルである。過去の実験で作成し保存していたサンプルを使用した。腎移植3日後、5日後の評価を行ったところB細胞が活性化され抗原抗体反応が起き、抗体関連型拒絶反応が生じていた。しかし、同時にT細胞系も活性化されており、純粋にB細胞のみの活性化を調べることが困難であり、やはりB細胞系の活性化を評価しマーカーを検索するためには感作状態を評価する必要があると考えられた。しかし、実験結果からT細胞系とB細胞の活性化の相関が認められたところもあり、これがマーカーとなりうる可能性があると考えられた。 新型コロナウイルス蔓延のため、一時期臨床において腎移植を施行することが自粛されていたため、本来は前向きに感作歴を有する腎移植患者を評価する予定であったが困難であった。また施行できた症例数が少なくなったため、その患者の中に本研究に登録可能な症例はいなかった。そこで、腎移植における感作歴の影響を後ろ向きに検討した。その結果、感作歴があっても全く影響がない群があることが判明した。この一つの原因として感作の回数や程度の強さがあるのではないかと考えられた。後ろ向きデータであるためリンパ球を用いた評価はできなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ラット腎移植抗体関連型拒絶反応を用いたB細胞活性化の評価を行った。DAラットの皮膚をLEWラットに皮膚移植し感作させ、2週間後にDA→LEWの腎移植を行った。胸腺細胞を用いたクロスマッチテストの結果からは、2日後からB細胞の活性化が著明となりドナー特異的抗体が産生されていた。5日後には組織学的にも重度の抗体関連型拒絶反応は起きていた。免疫染色では補体C4dが傍尿細管毛細血管に沈着していた。B細胞系バイオマーカー候補を免疫染色を用いって評価を行ったが、染色した全てのB細胞の活性化マーカーにおいてその増強が認められた。また組織学的にT細胞関連型拒絶反応も認められたため、T細胞の評価も行ったところT細胞の活性化も認められた。 臨床データを用いて感作歴が腎移植に与える影響を評価した。輸血歴、妊娠歴、移植歴を比較すると、術後に抗原抗体反応が惹起される程度は、移植歴、妊娠歴、輸血歴の順に高かった。妊娠歴、輸血歴はその回数によっても影響を受けていた。前向き評価とリンパ球を用いた実験は施行できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
ラット腎移植抗体関連型拒絶反応モデルを用いた実験では、研究目的であるB細胞系マーカーの探索は困難であると考えられた。ラット腎移植感作モデルの作成・評価が急務である。その他の問題点として、現在までの結果から感作モデルが完成したとしても、腎移植を行うとT細胞系も活性化される可能性が挙げられた。この解決方法としてはカルシニューリン阻害剤の投与が挙げられるが、B細胞は抑制せずにT細胞のみを抑制する必要があるため、投与のタイミングや投与量については今後検討していかなければいけない。 臨床研究では前向きの検討とサンプル採取が必要であるが、これまでの結果から感作歴の程度を数値化などして評価する必要性があると考えられた。これには後ろ向きデータを用いた検討でしか評価できないと考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス流行による実験制限のため、当初予定していた実験ができていないためです。次年度で遅れている実験を進めて使用する予定です。
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Research Products
(3 results)