2020 Fiscal Year Research-status Report
The role of elevated Activin in the amniotic fluid of chorioamnionitis - Analysis of the effects on the fetus and placenta.
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20K09592
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
安部 由美子 群馬大学, 大学院保健学研究科, 准教授 (70261857)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 典子 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 助教 (90598111)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アクチビン / 絨毛膜羊膜炎 / 羊水 |
Outline of Annual Research Achievements |
絨毛膜羊膜炎は早産の主な主因であるとともに、新生児慢性肺疾患などのリスクを増加させる疾患であることが知られている。一方、絨毛膜羊膜炎や子宮内感染症では、羊水中で、TGF-β superfamilyに属する増殖因子であるアクチビンが高値となることが報告されているが、この増加したアクチビンが胎児-胎盤系に対してどのような影響を及ぼしているかについての知見限定的である。このため、羊水中で増加したアクチビンが胎児-胎盤系に及ぼす影響を明らかにすることを目的として本研究を行った。 研究に用いるJcL:ICRマウスの羊水量と羊水中アクチビン濃度に関して、これまでに報告がみられなかったため、初年度である本年度は、まず、これらを測定し、胎仔齢に伴う羊水量と羊水中アクチビン濃度を明らかにした。得られた測定値と、絨毛膜羊膜炎・子宮内感染症の羊水で報告されているアクチビン濃度から、アクチビン注入量を決定し、肺発育段階管状期の胎生16.5日のマウスの羊水中にアクチビンを注入し、肺発育段階終末嚢期の胎生17.5日の胎仔肺を採取した。アクチビン注入群で、肺サーファクタントタンパク質をコードする遺伝子の一つに、mRNA発現の低下がみられた。 絨毛膜羊膜炎では羊膜の脆弱化により前期破水のリスクが増加する。一方、羊膜を構成する羊膜上皮細胞は胎盤の最内層で羊水と直接接しているため、羊水中で増加したアクチビンの影響を受け易い細胞であると推測される。羊膜上皮細胞において発現している、羊膜の脆弱化に関与する遺伝子発現に対するアクチビンによる影響をarray plateとRT-qPCRにより解析した。アクチビン(activin A)によりマトリックス関連因子の発現量に変化はみられず、羊膜上皮細胞は、羊水中のアクチビン濃度の変化に対する反応性が低いことが推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症対策の一環として年度内に複数回、計2ヶ月以上に及ぶ入構規制が行われ実験を行うことのできなかった期間が生じたために、研究の進行がやや遅れた。また、研究成果を発表する予定であった学会が、新型コロナウイルス感染症の流行により開催中止となったため、2020年度は学会発表を行わなかった。 一方、入構規制期間以外には実験を行い、アクチビンの胎仔に対する作用と胎盤に対する作用を検索した。実験に用いるマウスについて、既報からは必要な情報が得られなかったため、初年度である2020年度は基礎的データを取得した上で、羊水中へのアクチビン注入実験を開始した。これにより、流産させることなく妊娠を継続し、胎仔組織のmRNA発現量を定量することが可能となり、アクチビン投与群と対照群で、胎仔肺における発現量を比較することができた。また、胎盤への作用として、羊水に接する羊膜上皮細胞でarray plateを用いた網羅的検索を行い、マトリックス関連因子の発現量は、アクチビン(activin A)により変化しないことを明らかにした。すなわち、研究の進行に遅れはあるものの、わずかであることから、やや遅れていると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
羊水中で増加したアクチビンが胎児-胎盤系に及ぼす影響を明らかにするために、2021年度も研究分担者との共同研究を進める。2020年度に確立した方法を用いて、羊水中へのアクチビン注入実験を行い、アクチビンが胎仔肺発育に与える影響するを明らかにする。注入と継続した飼育および採材は、2020年度に引き続き、卓越した技術と経験を有する研究分担者が研究分担者の施設で行う。(1) 2020年度に、胎生16.5日に注入、胎生17.5日に採材し保存した組織の形態学的解析および分子遺伝学的解析を行う。(2)2021年度はヒトの妊娠後期に相当する胎生17.5日に、妊娠マウスの羊水中にアクチビンを注入する。対照群には同量の緩衝液を注入する。妊娠を継続し、肺発育の異なる段階で屠殺し、胎仔および仔の器官を摘出する。 (2)-1. 胎仔、仔の肺の組織形態学的解析 (2)-1-a. 肺胞期肺の肺胞の形態と数の解析:肺胞は肺胞期に成熟肺胞の形態となり、急速に数を増加させるため、アクチビン注入群で変化が生じるかを観察する。(2)-1-b. 肺胞II型上皮細胞特異的マーカーである肺サーファクタントタンパク質C(SP-C)と血管内皮細胞マーカーCD31に対する免疫組織染色による解析:各発育段階のアクチビン注入群で肺胞II型細胞の形成に変化がみられるか否かを解析する。(2)-2. 胎仔、仔の肺の分子遺伝学的解析: 各発育段階の肺で、肺サーファクタントタンパク質をコードする遺伝子の発現をRT-qPCRにより定量する。(3) (2)でアクチビン注入群に変化が見られた場合は、アクチビンの負の制御因子であるインヒビンとフォリスタチンを用い、(2)と同様のスケジュールで「アクチビン+インヒビン」および「アクチビン+フォリスタチン」の注入を行い、アクチビンによる変化が抑制されるか否かを明らかにする。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:新型コロナウイルス感染症対策の一環として入構規制が行われたために研究の進行がやや遅れ、分担者へ配分した分担金に繰越分が生じたため。使用計画:マウス胎仔肺の組織形態学的解析および分子遺伝学的解析で、2020年度に行うことのできなかった解析と、2021年度に計画しているアクチビン注入実験および胎仔肺の組織形態学的解析および分子遺伝学的解析を行う。
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