2021 Fiscal Year Research-status Report
若年子宮体癌に対する妊孕性温存ホルモン療法の予後予測因子の解明
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20K09607
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
山上 亘 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (30348718)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 子宮体癌 / 妊孕性温存療法 / 遺伝子パネル検査 / 予後予測因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、若年発症の子宮体癌/子宮内膜異型増殖症(AEH)の臨床因子,病理学的因子,分子生物学的因子,遺伝学的因子を網羅的に明らかにし,治療効果や腫瘍予後,妊娠予後,最適なサーベイランス等についての新たな戦略を開発することを目的としている.研究対象の若年性子宮体癌/AEHとしては、当院で2016~2019年に初回治療として高用量黄体ホルモン療法を施行した38例の治療前の子宮内膜全面掻爬検体のFFPE標本の病変部よりDNAを抽出し、DNA量、Qualityの確認を行ったところ、4例では不良であったため、34例(子宮体癌(類内膜癌G1)19例とAEH15例)につき、当院で開発した遺伝子パネルであるPleSSision-Rapidを用いて、遺伝子発現やcopy number等の解析を行った。また、FFPE標本を用いて、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、p53等についての免疫組織化学染色も施行した。主要な病的遺伝子変異としてPTENやCTNNB1の変異を認めることが多く、POLEやMMR遺伝子の病的変異はごく少数であった。これら結果と臨床病理学的因子や予後との関連性についての解析中であり、2022年8月に開催される第74回日本産科婦人科学会学術講演会で発表予定である。また、コントロール群としては、当院にて初回治療として標準治療を行った子宮体癌症例59例(類内膜癌39例、漿液性癌9例、明細胞癌2例、癌肉腫4例、その他5例)の摘出子宮標本のFFPEの癌部からDNAを抽出して、DNA量およびQualityの確認を行うとともに、当該患者の臨床病理学的因子や経過について後方視的にデータを収集した。59例中、8例は抽出したDNAのDIN値不良等の理由があり、遺伝子パネル検査に供する品質ではないことが判明した。今後、PleSSision-Rapidに供し、結果の解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年同様コロナ禍が継続していたが、当研究機関の診療体制は従前に戻ったため、患者からの同意の取得や患者情報の収集については、特に滞りはなかった。遺伝子パネル検査については昨年報告した通り、当初予定していたQIAGEN社のQIAseq Targeted DNA Panelsであるcomprehensive cancer panel v3ではなく、当研究機関の腫瘍センターゲノム医療ユニットが開発し、臨床研究を行っているPleSSision-Rapidパネル検査を用いた。想定よりもMMR遺伝子変異例が非常に少ないことが明らかとなったため、MMR遺伝子の生殖細胞性変異の解析について施行するかどうかは今後の検討としたい。 また、国内外の学会に参加して、最新の情報の収集に努めているが、コロナ禍により、学術講演会等がWEB開催/ハイブリッド開催となっており、研究者とのディスカッションが困難であると感じている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的である若年の妊孕性温存希望の子宮体癌/AEH症例に対し、当院にて高用量黄体ホルモン療法を施行した症例の予後予測因子をより明らかにするために、遺伝子パネル検査や免疫組織化学染色を進めてきたが、本研究対象のコントロールとして、①若年例以外、②高用量黄体ホルモン療法以外(=標準治療)を施行 した症例の解析も同時に行い、両者の比較を行う予定とした。その理由としては、高用量黄体ホルモン療法施行症例は、IA期の類内膜癌G1かAEHに限られるために、広い進行期や組織型を対象として解析を行う予定であるコントロール群(標準治療例)との解析を行うことにより、より多角的な情報が得られるだろうと期待されたからである。当院は、標準治療を施行している子宮体癌症例を多数経験しており、これらの症例の多くは当科の所有するバイオバンクであるKeio Women's biobankに同意を得て、臨床病理学的情報や腫瘍組織、血液等を保管しているため、それらの症例を対象とすれば、遺伝子パネル検査に供することは比較的容易である。2022年中には遺伝子パネル検査の結果を得て、総合的な解析が可能と考えている。臨床病理学的因子や予後との関連性の高い遺伝子変化が明らかとなった時点で、当該の変異遺伝子の変化について、症例を広げてバリデーションを行うことも考えたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症蔓延により、参加予定であった国内外の学会のほとんどがWEB開催またはハイブリッド開催が増加しており、学会の現地参加目的に見込んでいた旅費等の拠出がほとんどなくなった。特に、国際学会への参加については、当院の就業規定に抵触するために、本年度は参加できず、おそらく次年度も参加が難しいと考えられる。その一方で、上述したとおり、新たに研究対象のコントロール群として、子宮体癌の標準治療例のFFPEから抽出したDNAの遺伝子パネル検査を用いた解析を施行する予定であり、それにかかる費用として次年度使用額を使用する予定であり、残額はほぼその研究費として使用される見込みである。
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[Presentation] Long-term outcome of MPA therapy for endometrial cancer or atypical endometrial hyperplasia2021
Author(s)
Sakai Kensuke, Yamagami Wataru, Takahashi Mio, Kuroda Yuka, Yoshimura Takuma, Hirano Takuro, Makabe Takeshi, Chiyoda Tatsuyuki, Banno Kouji, Susumu Nobuyuki, Tanaka Mamoru, Aoki Daisuke
Organizer
第73回日本産科婦人科学会学術研究会
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[Presentation] 当院の子宮体癌における,遺伝子パネル検査結果に基づく臨床病理学的因子の解析2021
Author(s)
吉村 拓馬, 山上 亘, 中村 康平, 高橋 美央, 平野 卓朗, 坂井 健良, 真壁 健, 千代田 達幸, 小林 佑介, 阪埜 浩司, 西原 広史, 青木 大輔
Organizer
第63回日本婦人科腫瘍学会学術講演会
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