2021 Fiscal Year Research-status Report
帝王切開瘢痕症候群の病態解明と予防法立案の総合的研究
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20K09616
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
村上 節 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (20240666)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻 俊一郎 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (30601546)
樋口 明日香 滋賀医科大学, 医学部, 客員助教 (90613480)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 帝王切開瘢痕症候群 |
Outline of Annual Research Achievements |
帝王切開瘢痕症候群(Cesarean scar syndrome; CSS)における病態生理の解明を行うために、帝王切開瘢痕部を摘出した組織を用いて検討を行ってきた。これまでに、HE染色による病理学的検討から陥凹部では正常な子宮内膜は存在せず、出血を伴う微小血管が存在することを明らかにした。さらに異所性子宮内膜間質細胞を特異的に染めるマーカーであるIFITM-1の免疫染色により、陥凹部の表層より深部で異所性子宮内膜の存在を確認し、子宮内膜症との類似性を指摘した。 さらに陥凹部における炎症反応の視点から、T細胞のマーカーとしてCD3、B細胞のマーカーとしてCD20、NK細胞のマーカーとしてCD56、マクロファージのマーカーとしてCD68、好中球のマーカーとしてミエロペルオキシダーゼ(MPO)、そして肥満細胞のマーカーとしてtryptaseによる免疫染色による検討を行った。対象として何らかの理由で子宮全摘術を受けた帝王切開既往のある女性の陥凹部を用いて比較したところ、急性期の炎症マーカーはcontrol群で高く、慢性期の炎症マーカーはCSS群で有意に上昇していることが明らかとなった。これらのことから、CSSでは慢性の炎症が惹起されていることが推定され、CSSによる妊孕能の低下には、慢性炎症が関与していることが示唆された。 予防法の確立に関する臨床研究については、帝王切開における創部の縫合方法を単結紮2層縫合および連続2層縫合による無作為前向き試験の症例登録を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
免疫組織化学を中心とする病態生理の解明は論文化することができた。 2021年はCOVID-19の影響が引き続きある中で、臨床研究の症例登録は順調に進んでいる。 サルを使った帝王切開創部の基礎的研究については、新型コロナウイルス感染症を遠因とする協力者の都合により帝王切開を行う症例が減じていることからやや遅れがある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、帝王切開瘢痕部の解析結果を基に、受精卵が着床する子宮内腔の環境について解析し、CSSの妊孕能低下の背景にさらに迫る予定である。具体的には、まず正所性子宮内膜における慢性炎症である慢性子宮内膜炎の評価を行う。また子宮腔内の炎症性サイトカインのELISAによる定量化のための子宮内腔洗浄液の回収手法はすでに確立した。 CSSの予防方法についての検討は前向き無作為比較試験を進めていく。さらにサルを用いた帝王切開の縫合方法についての基礎研究も推進する予定である。
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Research Products
(2 results)