2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K09628
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
井原 基公 国際医療福祉大学, 大学病院, 講師 (50403506)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河村 和弘 国際医療福祉大学, 医学部, 教授 (10344756)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 薬物徐放システム / VEGF / IVA / 卵胞活性化療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
卵胞の成熟障害は早発閉経や高齢不妊患者、抗癌剤を使用した若年癌患者などの卵巣機能不全患者において治療困難な病因であり、それらの大半は原因不明である。我々のグループは新規治療法として卵胞活性化療法(IVA: in vitro activation)を開発したが、質の良い卵母細胞をより効率的に獲得するためには未だ改善の余地がある。卵胞の発育率を改善させるために世界においてもさまざまな方法が報告されているが、いずれも成熟卵胞の獲得率は低いままである。そこでIVA療法に改良方法を取り入れ、より優れた卵胞発育障害の治療法を開発し、卵巣機能不全患者から質の高い卵母細胞を獲得することを目的とした基礎研究を行った。 PI3KシグナルやHippoシグナル以外でも、VEGFやHIF-1αなどの血管新生因子も卵胞発育を制御している。IVAでは卵巣皮質組織切片を再度患者の卵巣や卵管の漿膜下に移植し直すため、その体内培養過程で移植卵巣組織をより効率的に生着させる必要がある。卵巣組織移植時に血管新生因子を試薬として使用しても、それらの半減期は極端に短く、組織長期培養中に分解されるため、作用効果は乏しい。そのため、薬物徐放システムを採用し、活性のある血管新生因子が長期(数日間)にわたって移植組織で機能できる環境を構築した。 今年度は共同研究者と交渉し、VEGF徐放粒子を作成してもらった。VEGFを用いた薬物徐放システムの有効性を評価するため、予備実験でVEGF徐放粒子をマウス卵巣組織切片と一緒に移植培養する最適部位を見出した。また、子宮に流入する血管が拡張することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予備実験でVEGF徐放シートを併用して卵巣組織切片を移植した場合では、VEGFを含まないコントロール移植と比較して流入血管の拡張が認められ、卵巣組織が壊死せずに残存している割合が高かった。また、腹部の筋膜と腹膜間にVEGF徐放シートを併用して移植すると効率的にコントロールと比較できることを見出した。 さらに、卵巣摘出後にVEGF徐放剤を子宮に注入・貼り付けした場合、子宮への流入血管が拡張し、子宮萎縮を認めなかったことから、VEGFが長期間活性を保持していることが示された。 コロナ禍のため、共同研究者の研究室で半年以上VEGF徐放粒子の精製ができず研究の開始が遅くなったため、分子生物学的な客観的データでの研究成果はまだ出せていないが、ポジティブな実験システムが構築できたため、本研究課題の進捗状況は順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記予備実験結果からVEGF徐放システムが機能していることが示されたので、その有効性をHE染色だけでなく、VEGF下流の遺伝子発現レベルや生着した残存卵胞の評価をすることで客観的データを作成する。この徐放システムは、当初の予定していた間葉系幹細胞を用いたMSC療法や、不妊患者の末梢血液から採取した血漿を用いたPRP療法よりもはるかに簡便で効率的に移植組織を生着させることができそうなので、もともと予定していた①卵巣皮質培養条件の比較検討と②卵巣皮質生着率改善効果と卵胞獲得率の比較検討はクリアできる見込みであり、このまま現在の実験を継続・展開していく。 また、③成熟卵母細胞獲得率、受精成功率の比較検討についても、移植した卵巣組織から卵子を採取することで課題をクリアすることができると考える。 さらに、血流豊富になった子宮の内膜厚を測定し、子宮内膜の肥厚化に対するVEGF徐放剤の有効性を立証することで、子宮内膜が薄いために不妊になっている患者の治療法を確立できる可能性があるため、追加で研究を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、当初予定していた共同研究者による試薬の精製が遅れ、研究自体が進まなかったため、実験に使用する予定であった使用期限がある試薬や消耗品の購入をしていなかったため、次年度の購入に充てる。また、学会参加にかかる旅費も次年度の参加費用に充てる。
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