2021 Fiscal Year Research-status Report
ヒト胎盤分化成熟機構の解明:分化状態を再現したモデル細胞から分化関連遺伝子の同定
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20K09632
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
石原 直恵 (琴村直恵) 藤田医科大学, 医学部, 研究員 (50571791)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石原 悟 藤田医科大学, 医学部, 講師 (00300723)
下野 洋平 藤田医科大学, 医学部, 教授 (90594630)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 胎盤 / 栄養膜細胞 / ヒストン修飾 / アロマターゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト胎盤組織の主要構成細胞である栄養膜細胞は、未分化栄養膜細胞から分化栄養膜細胞に分化する過程でアロマターゼ(エストロゲン合成酵素)遺伝子の発現を上昇させることが知られている。本研究課題では、ヒト胎盤の未分化栄養膜細胞のモデル細胞株JEG-3を用いてアロマターゼ遺伝子の発現調節機構を解析している。前年度は、分化誘導処理したJEG-3において、アロマターゼ遺伝子上流域に、転写活性化に関わるヒストン修飾(H3K27ac)の上昇を確認した。その結果を踏まえ、今年度は、アロマターゼ遺伝子のプロモーター上流のヒストン修飾に関わる因子の同定を試みた。 ヒストン修飾酵素阻害剤でJEG-3細胞を処理し、アロマターゼ遺伝子のプロモーター上流のヒストン修飾と遺伝子発現を検討した。その結果、プロモーター領域のヒストンH3K27のメチル化の減少及びアセチル化の上昇が、アロマターゼ遺伝子の発現に関連していることが明らかになった。更に、ヒストンアセチル化酵素CBPが、アロマターゼ遺伝子のプロモーター領域のヒストンH3K27をアセチル化し、転写活性化に関わっていることを示唆する結果を得た。 今後は、CBPがアロマターゼ遺伝子のプロモーター領域に局在する仕組みを解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アロマターゼ遺伝子のプロモーター領域のヒストンH3K27acが転写活性化に関与している可能性を検討するために以下の実験を行った。JEG-3細胞をヒストン修飾酵素阻害剤で処理し、ChIP法でアロマターゼ遺伝子のプロモーター領域のヒストン修飾を、RT-PCR法で遺伝子発現を検討した。DZNep(H3K27メチル化など転写抑制に働くヒストン修飾酵素の阻害剤)で処理したJEG-3細胞では、アロマターゼ遺伝子の発現が顕著に上昇した。この時、アロマターゼ遺伝子のプロモーター領域ではH3K27のメチル化が減少し、アセチル化が上昇していた。また、ヒストンアセチル化酵素CBPの局在も上昇していた。EZH2(H3K27メチル化酵素)特異的な阻害剤GSK126で処理したJEG-3細胞では、アロマターゼ遺伝子の発現は上昇しなかった。この時、H3K27のメチル化は顕著に減少したが、アセチル化の上昇は認められず、CBPの局在も変化しなかった。CBP/p300の阻害剤A-485で処理したJEG-3細胞では、アロマターゼ遺伝子の発現が顕著に減少した。以上の結果より、JEG-3細胞では、CBPがアロマターゼ遺伝子のプロモーター領域のH3K27をアセチル化し、転写を促進していると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
CBPはDNA結合能を持つ転写因子を介して特定の領域に局在すると考えられている。アロマターゼ遺伝子のプロモーター上流には、胎盤組織特異的転写因子の結合配列が報告されており、これらの転写因子がCBPをアロマターゼ遺伝子のプロモーター領域に局在させる可能性を検討する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により学会への参加が不可能になったため、旅費を使用する機会がなくなっった。また、コロナ禍で研究者を招聘して行うセミナーの開催が不可能になったため、謝金の使用機会がなくなった。これらの持ち越した予算は、次年度に同様の用途に使用するのとともに、データ解釈のために細胞生物学的技術を用いた新たな解析が必要になったため、その関連試薬などの消耗品購入に用いる予定である。
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