2021 Fiscal Year Research-status Report
HPVE7癌蛋白質を標的とした免疫療法のコンパニオン診断開発のための基礎的研究
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20K09656
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小松 篤史 日本大学, 医学部, 准教授 (90463851)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川名 敬 日本大学, 医学部, 教授 (60311627)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | HPV16型E7蛋白 / 子宮頸癌 / コンパニオン診断 / CIN / E7発現乳酸菌製剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
子宮頸癌の発症にはハイリスクヒトパピローマウイルス(HPV)の存在が必要条件であり、子宮頸部のHPV感染像は扁平上皮内病変(CIN)として病理学的に捉えることができる。CINの進展・退縮には、HPVのうちヒトでの抗原性(免疫原性)があるE7癌蛋白質に対する細胞性免疫の誘導、特にTH1反応(IFN-γ産生細胞、NK細胞、細胞傷害性T細胞等)が関与している。 我々はこの細胞性免疫を賦活化すべく、子宮頸癌・CIN2-3の癌抗原であるHPV16型E7を菌体に表出させた経口摂取可能なE7発現乳酸菌製剤を開発し検討したが、CIN3には有効性が示されたがCIN2の有効性はみとめなかった。そこで我々はE7発現乳酸菌製剤を改良した新型のE7発現乳酸菌製剤IGMKK16E7を開発し、さらにCIN2はCIN3に比してE7発現量が低いためにCIN2に対する本製剤の治療効果が不十分であったと考察できる。つまり病変局所におけるE7発現量は、本製剤のコンパニオン診断(薬理効果を最大限発揮できる集団の抽出)になりうる可能性が示唆された。そこで本研究では、CIN2-3におけるE7発現量の測定と、E7発現乳酸菌製剤の臨床的有効性の相関を調べることを最終目標とした。そのためには、E7発現量の半定量的な測定法の開発が必須である。 まずE7発現量の定量的解析を行うべく、施設研究倫理委員会の承認のもとHPV16型CIN患者を抽出して得られた液状細胞診検体及び子宮頸癌細胞株を用いて、E7の発現を定量的RT-PCRで定量的に測定する系、mRNA検体を用いたHPV16 E7の発現を定量的に測定する系、ELISAによる蛋白質定量を検討中である。さらに抗HPV16E7抗体(市販)を用いてELISAにてE7蛋白質量を定量的に測定、ImmunocytochemistryによりE7の存在を免疫染色にて確認することにしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
子宮頸癌細胞株を用いたHPV16型E7の発現量の定量化に関する検討では、Caski細胞、SiHa細胞の細胞数を振ったサンプルをそれぞれ作製して、mRNA検体を用いたHPV16型E7の発現を定量的に測定可能か検討を行った。さらに蛋白質レベルにおいては、それぞれELISAによる蛋白質定量が可能か検討を行った。 現在のメインとしては、当院倫理委員会の承認を得たうえで採取したCIN患者からの検体による検討である。当院婦人科外来で経過をフォローしているCIN患者の子宮頸部細胞診を行う際に、その検体の一部を用いてHPV16型E7の発現を検討しているが、HPVタイピングと細胞内のHPV16型E7発現量を同時測定することを目指している。今回の検討対象はHPV16型陽性が判明しているCIN2/3であり、今後も引き続きさらに対象症例を増やして検討していく必要がある。当院には多くのCIN患者をフォローかつ、新たなCIN患者が紹介されてきており、検体数は十分に確保されている。 CIN2/3患者のから採取した液状細胞診検体に関する検討では、HPV E7 mRNAの検出と定量的RT-PCRでE7発現量の測定、タンパク質レベルではELISA法によりE7タンパク質を定量的に測定を継続的に行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
当院婦人科外来において、新たに近隣の医療施設から紹介され当院での精査及びHPVタイピングによりHPV16型が判明したCIN2/3症例の子宮頸部細胞診検体を引き続き収集する。これによりCIN患者から採取される子宮頸部細胞診の検体は今よりもさらに収集され、HPV16型E7発現量の解析が進むと考えられる。また今後も子宮頸癌細胞株を使用したHPV16型E7発現の解析と合わせて、HPV16型E7発現に関してmRNAや蛋白レベルで定量的に評価が可能かに関して、検討を進めていく予定である。 新型のE7発現乳酸菌製剤IGMKK16E7の有効性に関する検討も引き続き行う。今後2019年夏に開始したIGMKK16E7の医師主導治験が終了し、今後キーオープン、ランダム化の割り付け結果が判明するため、臨床的有効性とE7発現量の関連を検討することが可能になる。HPV16型E7の発現量の定量化が新型のE7発現乳酸菌製剤IGMKK16E7のコンパニオン診断となり得るのかに関して、最終的な結論を出していく必要があると考えている。
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Causes of Carryover |
令和3年度は,令和2年度に引き続き新型コロナウイルス流行の影響で日本産科婦人科学会をはじめとした各学術集会総会及び地方会などが軒並みオンライン開催となり、想定した旅費を使用しなかったことが最大の理由として挙げられる。 令和4年度はワクチンの普及により新型コロナウイルスの終息が予想され、旅費に関しても予定通りの予算を執行できると考えている。近隣の医療施設の閉鎖があり、令和3年度以上にHPV16陽性CIN2/3患者が集まってくることが予想されており、検体数が令和3年度より増加すれば令和4年度の使用額は増加すると推測される。また令和4年度は令和3年度よりも細胞株を用いた検討もより増やしていく予定である。
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