2020 Fiscal Year Research-status Report
生理的・病的条件下でのHIF-2αによる栄養膜細胞のFlt1遺伝子発現機構の解明
Project/Area Number |
20K09675
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Research Institution | Jobu University |
Principal Investigator |
笹川 忠 上武大学, 医学生理学研究所, 研究員 (30424675)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Flt1 / HIF-2α / 妊娠高血圧症候群 / 栄養膜細胞 / 転写制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
妊娠高血圧症候群における胎盤でのsFlt1タンパク質の過剰産生に関与する分子メカニズムは明らかになっていない。これまでに申請者は、HIF-2αのFlt1遺伝子発現への関与を見出しており、本研究では胎盤絨毛構成細胞である栄養膜細胞におけるHIF-2αによるFlt1遺伝子の転写制御機構の解明を目指した。HIF-2α は パートナー分子であるHIF-1βと協調して、標的遺伝子上に存在する低酸素応答性領域(HRE)への結合により転写を制御することが知られているため、初年度では低酸素濃度環境下でのFlt1遺伝子発現上昇におけるHIF-1βの関与について検討を行った。低酸素条件下で培養した3種類のヒト絨毛由来細胞株(BeWo, JAR, JEG-3)の核抽出液を用いた共免疫沈降の結果、HIF-2αとHIF-1βの相互作用を確認した。さらに、HIF-1βのsiRNAを導入することで、BeWo細胞とJEG-3細胞における低酸素誘導性Flt1遺伝子発現上昇が抑制されること、ヒト単離栄養膜細胞における低酸素刺激によるsFlt1産生増加が減少することが認められた。これらの結果により、栄養膜細胞における低酸素誘導性Flt1遺伝子発現上昇にはHIF-2αとHIF-1βから成るヘテロダイマーが機能していることが明らかとなった。また、申請者はこれまでに3種類のヒト絨毛由来細胞株をDNA脱メチル化処理することで低酸素誘導性Flt1遺伝子発現上昇がさらに増加することを見出している。siRNA導入実験の結果、BeWo細胞におけるその増加分に関してもHIF-1αではなくHIF-2αとHIF-1βが働いていることが明らかとなった。さらに、これまでに報告のあったFlt1遺伝子の転写開始点より約1kbp上流に位置するHREについても検討を行った。ルシフェラーゼアッセイおよびHRE内のCpG部位のメチル化状態の結果から、BeWo細胞ではこのHREは低酸素誘導性Flt1遺伝子発現上昇に関与していないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
病的条件下(低酸素ストレス刺激を与えた培養系)でのヒト栄養膜細胞におけるFlt1遺伝子の転写制御機構の一端を明らかにすることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
生理的条件下(通常酸素濃度培養系)ならびに別の病的条件下(炎症性サイトカイン刺激を与えた培養系)でのFlt1遺伝子の転写制御機構の解明に取り組むとともに、低酸素濃度環境下でのHIF-2α/HIF-1βヘテロダイマーが結合するFlt1遺伝子上の機能的なHREの同定も進める。
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