2021 Fiscal Year Research-status Report
胚性幹細胞からの妊娠初期胎盤環境モデルの発生学的分子基盤の解析
Project/Area Number |
20K09676
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
矢部 慎一郎 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (50436458)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 合胞体性栄養膜細胞 / Prime型ES細胞 / Naive型ES細胞 / 妊娠初期胎児胎盤環境 / 発生学的分子機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ヒトES細胞から合胞体性栄養膜をin vitroで誘導する際の時間特異的遺伝子発現に着目することにより、代謝や免疫応答等、機能をになう遺伝子推移から初期胎児胎盤環境の発生学的特徴を明らかにすることを目標とする。
今回特に注目しているものとして神経誘導がある。周産期臨床では早期早産児の性別による生命神経予後の差異が問題となるが、これには胎児と同じ染色体・遺伝子をもつ胎盤が関与する可能性があると考えられる。46XY由来ヒトH1ES細胞と46XX由来ヒトH9ES細胞からそれぞれ同条件で誘導した合胞体性栄養膜細胞でのニューロン/グリア誘導因子の発現及び差異を、時期特異的に網羅することで神経誘導での発生基盤を検討していく。
また、Naive型ES細胞による合胞体性栄養膜細胞の誘導も行う。従来のPrime型では着床後胚盤胞の内部細胞塊から発達するエピブラストの多能性を維持していると考えられる一方で、Naive型では着床前の多能性を維持していると考えられ、より高い未分化性が想定される。今回Prime型に加えNaive型を用いて誘導した合胞体性栄養膜細胞を用い、どちらがより妊娠初期の特徴を有した胎盤環境か検討する。その差異は、細胞樹立時の胚発生段階によるDNAメチル化状態の差異に依存する可能性が考えられることから、bisulfite法などエピジェネティック修飾についても検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
まずES細胞をもちいた本研究を施行するために、ヒトES細胞の使用に関する指針に従い文部科学大臣への届出を行ったがこの過程に一年を要した。次にES細胞を用いた合胞体性栄養膜細胞の誘導には我々が2016年に報告した誘導諸因子を用いる予定であるが、このうちFGF receptor inhibitorの入手が困難となっている。合胞体性栄養膜の中で妊娠初期の胎盤環境の特徴を有するこの誘導方法は発生学的分子基盤の解明を主とする当研究にとって必須と考えている。現在まで合胞体性栄養膜の誘導はほかに2報の報告があるが、いずれも一部異なる誘導因子を用いておりこれらの誘導では我々が証明した妊娠初期の胎盤環境の特徴を有しているかはわかっていない。FGF receptor inhibitorの入手待ちだが、必要に応じて、他の誘導方法を用いた合胞体性栄養膜細胞の作成を試みる。
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Strategy for Future Research Activity |
当研究と同じ誘導諸因子を用いた細胞性栄養膜細胞前駆細胞の作成が私の所属したグループから報告されている(Yang Y, et al. Proc Natl Acad Sci USA. 2015; 112{18}:E2337)。この方法では、ヒトES細胞から細胞性栄養膜前駆細胞をいったん誘導し培養期間に応じてHCG産生能を有する栄養膜細胞を誘導することができる。この細胞が合胞体性栄養膜細胞でよいのか、妊娠初期の胎盤環境を有するかについては評価する必要があるが、細胞性栄養膜細胞前駆細胞から細胞培養を開始することでFGF receptor inhibitorの使用を回避することができる。また、同細胞の取り扱い経験があるためスムーズに研究を進めることができる。
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Causes of Carryover |
ヒトES細胞を用いた合胞体性栄養膜細胞誘導の研究環境整備が遅れているため。本来令和3年時に施行予定であった「ES細胞から誘導した合胞体栄養膜細胞の時間特異的遺伝子発現プロファイルの作成」については令和4年に施行する予定である。
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