2022 Fiscal Year Research-status Report
胚性幹細胞からの妊娠初期胎盤環境モデルの発生学的分子基盤の解析
Project/Area Number |
20K09676
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
矢部 慎一郎 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (50436458)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 合胞体性栄養膜細胞 / ES細胞 / 胎児胎盤環境 / 発生学的分子機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ヒトES細胞から合胞体性栄養膜をin vitroで誘導する際の時間特異的遺伝子発現に着目することにより、代謝や免疫応答等、機能をになう遺伝子推移から初期胎児胎盤環境の発生学的特徴を明らかにすることを目標とする。
まず、ヒトES細胞を用いた妊娠初期胎盤環境を有する合胞体栄養膜細胞の誘導条件において、xeno-free環境を目指しての検討を行った。我々の報告したBMP4、A83-01(Activin receptor like kinase inhibitor)、PD173074(FGFR1 inhibitor)を用いたレジメンでは、誘導段階においてマウス胎児線維芽細胞で培養液を馴化させたconditioned mediumが必須であった。今回我々はヒトES細胞の播種濃度を変更することにより、培養液としてconditioned mediumを用いずにCGB陽性かつHLA-G陰性の細胞を得た。この細胞を単離した上でDAPI染色すると直径100um程度の多核細胞であることが確認でき合胞体栄養膜細胞を誘導できることが明らかとなった。将来的な臨床への応用に向けて細胞培地についてもxeno-freeを考慮してvitronectinやlaminin-521をマトリックスとして用いた細胞誘導についても検討していく。
続いて、妊娠初期胎盤環境で想定される恒常的な低酸素状態を再現するため、大気酸素濃度条件(20%)に加え低酸素条件下でヒトES細胞から合胞体栄養膜細胞を誘導している。発生段階に伴い要求される酸素濃度は上昇すると想定されるが至適濃度は明らかにされていないため、3%、8%、12%での培養条件下で誘導時期別のHCG産生能、VE-cadherinを用いた細胞癒合能を検討中である。今後は、各発生段階別に組み合わせて最終産物の解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
まずES細胞をもちいた本研究を施行するために、ヒトES細胞の使用に関する指針に従い文部科学大臣への届出を行ったがこの過程に一年を要した。次にES細胞を用いた合胞体性栄養膜細胞の誘導には我々が報告した誘導諸因子を用いる予定であったが、この中でFGF receptor inhibitorの入手が国際的な感染拡大状況の中で困難であった。 今回、合胞体性栄養膜誘導の時間軸に着目して発生段階別に検体を採取して細胞離解の上、解析に用いるが、誘導完成した細胞に比較して発生段階の合胞体性栄養膜は細胞離解しにくいことがわかった。剥離に伴う細胞ロスを避け純度を上げるための方策が必要であり現在検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の合胞体栄養膜細胞誘導では、細胞誘導率は全ES細胞の0.1%程度で解析に用いるためには効率が問題となる。誘導維持には一定の大きさの細胞塊が必要で、疎な細胞集団ではマトリックスとの接着を維持できない。xeno-free環境を考慮して検討予定のlaminin-521は、より微小な環境での細胞維持管理に有用との報告があり誘導効率が改善される可能性がある。また細胞剥離時の酵素や物理的侵襲にともなう細胞ロスを避けるため、ReLeSR等非酵素細胞剥離薬も検討される。早期の導入を考慮し研究促進に役立てる。
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Causes of Carryover |
ヒトES細胞を用いた合胞体性栄養膜細胞誘導の研究環境整備が遅れたため。本来令和4年時に施行予定であった「ES細胞から誘導した合胞体栄養膜細胞の時間特異的遺伝子発現プロファイルの作成」については令和5年に施行する予定である。
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