2023 Fiscal Year Annual Research Report
ホスホイノシチド動態制御を介したヒトパピローマウイルス潜伏感染機構の解明
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20K09682
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
柊元 巌 国立感染症研究所, 病原体ゲノム解析研究センター, 室長 (70291127)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 雄彦 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (50333365)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | HPV / PTEN / E1 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでにHPV16の複製タンパク質E1をHEK293細胞に過剰発現させると、PIP3ホスファターゼであるPETNの発現レベルが減少すること、その減少にはE1のATP分解活性によるNFκB活性化が必要なことを見出しており、PTEN減少のメカニズムの解明を進めた。内在性PTENの発現が見られないヒト子宮頸癌細胞C33AにFLAG-PTENを発現させても、E1によるPTEN減少は再現され、プロテアソーム阻害剤(MG132)及びオートファジー阻害剤(bafilomycin A1)を添加しても、この減少が認められたことから、プロテアソーム及びオートファジーを介したPTEN分解の可能性が否定された。一方、PTENはエクソソームを介して細胞外に分泌されることが報告されていることから(Science Signaling, 2012, Vol 5, Issue 243)、E1によるPTEN減少にエクソソームによる分泌系が関与している可能性を検討した。エクソソームに取り込まれないFLAG-PTEN変異体(K13E)に対するHPV16 E1の作用をC33A細胞の一過性発現系で調べたところ、K13E変異体においても野生型FLAG-PTENと同様にその細胞内レベルが減少したことから、エクソソーム分泌系の関与は否定された。また、ホスファターゼ活性を失ったPTEN変異体(C124S, G129E)でもE1による細胞内レベルの減少が起こったことから、PTENのホスファターゼ活性は関与していないことが示された。さらにHPV16 E1とPTENとの細胞内での結合をC33A細胞でのmammalian two-hybrid系を用いて検討したが、両者の物理的結合を示すレポーター活性の上昇は検出されなかった。PTENは多くの癌種で変異・欠失している癌抑制遺伝子であるが、HPV陽性の子宮頸癌ではPTEN変異の頻度が低いことが報告されている。E1によるNFκB経路の活性化を介したPTEN分解が、HPV発癌に関わる可能性が示唆された。
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