2020 Fiscal Year Research-status Report
内耳メカノトランスダクション欠損マウスを用いたシスプラチン難聴の発症機序の解明
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20K09685
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
川島 慶之 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (10376759)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | シスプラチン / 耳毒性 / 感音難聴 / メカノトランスダクションチャネル / 有毛細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
シスプラチンは多様な悪性腫瘍に対し高い有効性を示すが、副作用として 腎障害と感音難聴(以下、シスプラチン難聴)を引き起こす。腎障害は大量補液により予防・軽減 されるが、難聴に関しては予防手段も治療法もなく、生涯に渡り患者のQOLを著しく低下 させる。シスプラチン難聴の主な原因は、シスプラチンを取り込んだ有毛細胞のアポトーシスである可能性が高く、有毛細胞へのシスプラチンの取り込み経路を明らかにすることはシスプラチン難聴の予防手段 を考える上で極めて重要である。 始めに、内リンパ腔に到達したシスプラチンの内耳有毛細胞への主な進入経路がメカノトランスダクションチャネルであることを検証するために、in vitroでの実験から開始した。日齢3-4日の野生型マウスから培養した蝸牛感覚上皮をシスプラチンに暴露させたのちに固定し、phalloidinで聴毛の形態を、Myosin VIで細胞体の形態を観察した。また活性型Caspase-3抗体を用いてアポトーシスの進行を評価した。シスプラチン濃度および暴露時間を振って、有毛細胞の障害の定量評価に適当な濃度、暴露時間を設定している。また、メカノトランスダクションチャネル欠損マウス(Tmc1;Tmc2ダブルノックアウトマウス)から培養した蝸牛感覚上皮を、野生型と同様にシスプラチンに暴露させ、有毛細胞の障害の程度を定量評価している。並行して、野生型マウスから培養した蝸牛感覚上皮をCaキレート剤に暴露させ、tip linkを切断することによってメカノトランスダクションがあっても機能しない有毛細胞を作製し、シスプラチンによる障害がどのように変化するか検討している。蛍光標識したシスプラチンを用いて、シスプラチンの有毛細胞への取込が評価できるかも検討しているが、まだはっきりとしたデータは確認できておらず、至適濃度や暴露時間、暴露後固定までの時間などを振って検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
in vitroでのシスプラチンの有毛細胞への取込、有毛細胞の障害の程度を定量評価している。統計学的検討を行うまでにはnが足りていない。新型コロナウイルス感染症流行のため、一時的に実験動物の数を減らすことや、完全にストップすることを余儀なくされたことが影響している。
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Strategy for Future Research Activity |
今のところ、研究計画の変更は考えていない。当初の予定通りに進めて行く予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症流行の影響で、一時的に、動物実験の縮小および完全な停止を余儀なくされた。
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