2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of a novel treatment for severe facial nerve palsy by intratympanic administration of sustained-release neurotrophic factor
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20K09715
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
羽藤 直人 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (60284410)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 啓之 愛媛大学, 医学系研究科, 准教授 (00403808)
岡田 昌浩 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (20512130)
寺岡 正人 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (40444749)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 顔面神経麻痺 / ゼラチンハイドロゲル / 経鼓膜鼓室内投与 / 栄養因子 / 神経再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、高度顔面神経麻痺に対する外来で施行可能な、新しい耳鼻咽喉科的治療法の開発にある。徐放化栄養因子の経鼓膜鼓室内投与は、顔面神経麻痺発症後の早期からステロイド全身投与との併用が低侵襲に可能で、有効性が証明されれば革新的な新規治療法となる。本研究では、新たに開発した顔面神経冷却による高度麻痺モルモットを用いて、徐放化栄養因子の鼓室内投与が有効なタイミングや栄養因子の濃度を、複数の栄養因子(FGF、IGF)、徐放化ゼラチンで検証している。また、栄養因子の神経への移行機序や効果発現機序の解明を行っている。 ①bFGFとIGF1の再生能比較:新たに開発した顔面神経冷却麻痺モデルを使用した。齧歯類は末梢神経の再生力が強く、神経挫滅では数週間で麻痺が治癒するが、冷却モデルでは治癒しない。安定的に後遺症を発現する顔面神経麻痺モデルを、再現性高く作製することに初めて成功した。bFGFとIGF1の2種の栄養因子を臨床製剤として購入した。栄養因子はゼラチンハイドロゲルに含浸させた後、鼓膜切開により経外耳道的に鼓室内に留置し2週間で徐放させる。投与時期は、冷却処置直後で検討した。その結果、どちらの栄養因子も麻痺の回復を明らかに改善した。麻痺は早期回復傾向を有し、治癒率も向上させた。 ②ゼラチンハイドロゲルの徐放性能の評価:臨床使用目的にGMP基準で作製されたゼラチンハイドロゲルを2種類入手した。製法により粒子径、pHやサイズが異なっているため、分解速度や栄養因子の徐放性能を比較検討した。その結果、A社のマイクロスフェアゼラチンが、良好な除法性能を示した。今後はA社のゼラチンを使用予定である。 ③A社のゼラチンハイドロゲルを用いて、冷却にて高度麻痺を生じさせたモデル動物に、鼓室内に栄養因子を徐放投与した。現在その作用機序や栄養因子の顔面神経への移行機序を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね順調に進捗している。コロナ禍による研究制限が伴ったが、個人で実施可能な研究が多く、大きな影響は受けていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初予定通り、以下の3項目の研究を予定している。 ③栄養因子の至的投与量の検討:良好な再生能と徐放性能を認めた栄養因子とゼラチンとの組み合わせで、至的投与量を検討する。モルモット冷却麻痺モデル用いて、神経再生の程度で評価を行う。鼓室内に投与できるゼラチン量は一定なので、含浸させる栄養因子の濃度を変化させて比較検討を行う。 ④栄養因子の顔面神経への移行機序の解明:鼓室内に投与された薬剤が顔面神経へ移行する機序の詳細は明らかでない。冷却麻痺モデルを用いて、栄養因子を免疫染色し、経時的に組織学的検討を行う。冷却麻痺モデルは顔面神経骨間管を開放することなく麻痺を生じさせることができるため、移行機序の解明に適している。 ⑤栄養因子の再生効果発現機序の解明:bFGFとIGF1はどちらも神経再生能を有することが既に証明されているが、in vitroでの研究が主体で、in vivoではまだ不明な点が多い。今回の申請研究では、神経軸索やシュワン細胞におけるレセプターの局在や、軸索発芽や再髄鞘化、血管造成のメカニズム、神経細胞死抑制の詳細を主に分子細胞生物学的に検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、動物実験の規模や期間縮小を行ったため、一部の研究計画を次年度に繰り越した。2022年度もコロナの影響が予想されるが、可能な範囲で、研究規模を戻していけば繰り越し分を使用できる見込みである。
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Research Products
(3 results)