2020 Fiscal Year Research-status Report
Binaural brain mechanism of bilateral cochlear implants with auditory neuropathy
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20K09723
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Research Institution | 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター) |
Principal Investigator |
加我 君孝 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), その他部局等, 名誉臨床研究センター長 又はセンター長 (80082238)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
南 修司郎 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), その他部局等, 医師 (00399544)
細谷 誠 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (30645445)
榎本 千江子 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), その他部局等, 研究員 (70466241)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Auditory Neuropathy / 両耳聴 / 人工内耳 |
Outline of Annual Research Achievements |
1996年に新しい聴覚障害として研究代表者の加我がAuditory Nerve Disease (AND)、米国のStarrがAuditory Neuropathy (AN)としてそれぞれ発表したが、現在では同一の新しい聴覚障害として世界的に認知されている。また2008年には本疾患の先天性障害について米国のNorthernらがAuditory Neuropathy Spectrum Disorders (ANSD)として提案した。現在、ANSDの効果的な治療の主たる方法は両側人工内耳埋込術である。しかし、ANSDはsynaptopathyとneuropathyの少なくとも2つのタイプがあり、両耳聴が中枢聴覚で成立しているか全く不明で、単耳聴と両耳聴成立の有無を明らかにすることに取り組んだ。先天性難聴群4例、後天性難聴群11例について、①Dichotic Listening Test (DLT)による両耳分離能検査と②音像定位検査による両耳融合能検査を実施し両耳聴が実現されているか研究した。その結果、両耳聴は①のDLTも③の方向感検査も成立することがわかった。①のDLTは手術の新しい耳の正答率が低く、③の方向感は両群とも両耳強度差(IID)は成立するが、両耳時間差(ITD)は先天性群では成立せずスケールアウトで、後天性群では8例中1例のみスケールアウトであった。すなわち先天性群は後天性群に比べ方向感能力の獲得にはハンディがあることがわかった。先天性のANSDの就学児6例に対し純音刺激を与え、左右別々に反応閾値を調べた。両耳とも閾値は20~25dBで良好であった。両耳聴検査が可能な年齢になり次第、今後の研究を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
成人の人工内耳症例4例と後天性難聴11例について両耳聴検査を実施した。このデータを基にAN症例の両耳聴検査の結果が予想可能な成果をあげるまで進捗した。すなわち先天性症例は両耳聴にハンディがあることがわかった。これは後天性症例は難聴が進行する以前に両耳聴の経験があったためによい結果が得られた可能性が高い。先天性群は両側人工内耳埋込術後初めて両耳聴を体験するため、脳内の両耳聴学習が新しく必要なためであろう。このように研究はおおむね順調であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では電気生理学的検査と聴覚心理学的検査により先天性の小児のANSDと中途発症のANをAuditory SynaptopathyとAuditory Neuropathyの2つに分類し、両側人工内耳および両側補聴器装用で両耳聴が中枢聴覚系で実現し得るか否かを解明する。 ①人工内耳埋込術時の全身麻酔下のElectrical Evoked Auditory Brainstem Response (eABR)の測定とeVの潜時と閾値の測定を行う。②単耳の聴力検査として純音聴力検査、単音節、単語、文の聴取能検査(CI20014)を行う。③両耳聴の聴覚・心理学的検査として方向感検査をリオン社製方向感検査装置を用い、両耳時間差(Inter-aural time difference)および両耳音圧差(Inter-aural intensity difference)を調べる(両耳融合能検査)。④両耳分離能検査として杉下・加我が作成した3桁の数字によるDichotic Listening Test (DLT)を行う。 先天性のANSDと中途発症のANの両耳人工内耳装用で、両耳聴の各種の検査で実現するものとしないものを明らかにし、それが何故か、聴覚機能および脳機能の統合処理の機序より明らかにし、同時に英文論文にして海外の有力誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
今年度はCOVID-19の影響で検査症例数が予定より少なかったが、次年度以降はさらに追跡可能な症例のデータも追加し、検査用紙などの補充、英文誌投稿準備などで研究費を使用予定である。
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