2022 Fiscal Year Research-status Report
デルタ型グルタミン酸受容体の異常による内耳synaptopathyの病態解明
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20K09727
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
藤川 太郎 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (60401402)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 難聴 / グルタミン酸受容体 / シナプス病 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は中枢神経系のみならず内耳においても重要な役割を担っていると考えられるデルタ型受容体(GluD)とそのリガンドであるcerebellin 1(Cbln1)の、内耳における局在と機能を明らかにしようとするものである。これまでの研究で、Cbln1が内側オリーブ蝸牛束―外有毛細胞間(MOC-OHC)シナプスのシナプス間隙に局在すること、GluD1ノックアウトマウスが高音域から進行する感音難聴を呈すること、それに一致してMOC-OHCシナプスが失われることを明らかにし、内耳の遠心系の変性を主体とする新たなシナプス病の概念を提唱した(2021年の耳科学会にて報告)。その後、GluDの局在を明らかにする目的でGluD1タグノックインマウスを新たに作成して光学レベルでの解析を行い、MOC-OHCシナプスのプレ側にあたるMOCシナプス終末にGluD1の発現を認めた(2022年のNeuro2022にて報告)。しかしこの局在は中枢神経系で一般にみられるポスト側への発現と相反する結果であったこと、さらに電子顕微鏡レベルで一致したパターンが確認できなかったことから結論を下すことができなかった。そこで先ずはCbln1ノックアウトマウスの表現型と形態学的な変化の関係を確認する方針に変更した。これまでの研究から、Cbln1ノックアウトは同様に外有毛細胞機能障害による高音域の難聴を示し、MOC-OHCシナプスが生後2か月齢から急速に変性することが確認された。現在は発生学的な変化がみられるかどうか、過剰音響刺激に対する脆弱性があるかどうか、外因性Cblnによってそれがレスキューできるかどうかについて、研究が進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績において記述した通り、当初の目的であった内耳におけるデルタ型受容体の局在を示すことが想像以上に困難であったことから研究の全体の進捗としてはやや遅れている。しかし、デルタ型受容体の局在を直接示すことができなくても、そのリガンドであるCbln1の機能を明らかにすることで間接的に病態の解明ができると考え、現在精力的に取り組んでいるところである。Cbln1ノックアウトマウスの解析によって、すでに表現型とそれを説明できる形態学的異常が確認できている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度中に研究成果をまとめるべく、精力的に実験が進行中である。中枢神経系においてデルタ型受容体はシナプスの形成と維持に重要とされている。内耳ではCbln1がシナプスの維持のみにはたらくのか、形成にも役割を担うのかについて解析中である。また慶応義塾大学耳鼻咽喉科と共同で、音響障害モデルを用いたCbln1のシナプス病予防効果を検討中である。先行研究からCbln1タンパク質の髄腔注射やAAV感染による発現によって、Cbln1機能が最短2日で一時的に回復することがわかっている。これを内耳に応用し、TTS後にAAVで内耳にCbln1を発現させ、MOC-OHCシナプスの減少や不可逆的な難聴が予防できるかを検討する。これらのデータを数か月中にまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
当初想定していた結果が得られなかったため、若干の方針転換を行い、研究年度を1年延長した。研究遂行のやめの予算としては十分と考えている。
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