2023 Fiscal Year Research-status Report
加齢性難聴マウスにおける炎症性サイトカインの内耳ゲノム発現網
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20K09732
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
假谷 伸 川崎医科大学, 医学部, 教授 (10274226)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 幸英 岡山大学, 大学病院, 講師 (00423327)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 蝸牛 / C57BL/6Jマウス / 加齢性難聴 / リアルタイムRT-PCR / 免疫染色 / トランスクリプトーム / 内耳免疫 / サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度末までに、これまでに検討済みであった1年齢に加えて6ヵ月齢マウスの聴力を聴性脳幹反応で検討した。雄C57BL6Jマウスは6ヵ月齢ですでに加齢性難聴を呈しており、その程度は1年齢マウスとほぼ同等である。このことより1年齢マウスの蝸牛の加齢性変化は一定以上進行した状態であると言える。次にリアルタイムRT-PCRを用いて免疫関連遺伝子Casp1, IL18r1, IL18rap, IL1B, Card9, Clec4e, Ifit1, Ifit3, Tlr9の発現をそれぞれ若年マウス、3ヵ月齢、6ヵ月齢、9ヵ月齢、12ヵ月齢で検討した。これらの内6ヵ月齢までに有意な発現増加を示した遺伝子にはIfit3(3ヵ月齢で増加), IL1B(3ヵ月齢で増加), IL18rap(6ヵ月齢で増加)があった。これらの3遺伝子は加齢性難聴の発症自体に関係する可能性があり、今後その機能を研究することにより、加齢性難聴の原因となるメカニズムが明らかになるかもしれない。一方Ifit3とIL18rap以外の遺伝子はすべて、9ヵ月齢と12ヵ月齢の間に急激な上昇をしめしていた。聴力等から推察すると9ヵ月齢から12ヵ月齢のマウス蝸牛の加齢プロセスは進行した状態と考えられ、これらの免疫応答はむしろ加齢性変性の結果としてもたらされたものと推測される。また、マウス蝸牛でのマクロファージの局在を特異的マーカー(Iba1)の免疫染色で検討したところでは、1年齢の蝸牛においてマクロファージは外側壁(らせん靭帯・血管状)に存在していた。IL-18 receptor 1やIL-1betaの発現はコルチ器にも認められるので、これらの炎症・免疫反応は多彩な分子メカニズムを介すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
加齢性難聴を呈するマウスの蝸牛では、サイトカイン遺伝子をはじめとする、炎症・免疫反応にかかわる遺伝子群の発現が増加していると示したことなどから当研究計画はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
加齢にともなう炎症・免疫反応が蝸牛のどの様な構造でみとめられるのか、マクロファージのマーカー(Iba1蛋白)の免疫染色で検討したが、さらなる関連因子の検討により、加齢性難聴の原因にかかわると推測される免疫関連遺伝子が明らかにする。また、その機能を研究することは、加齢性難聴の予防指針などにつながりうる。
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Causes of Carryover |
実験機材の不具合などが発生せず、備品の購入などは必要なかった。実験・ データ解析はとどこおりなく行われ、特に反復実験の必要もなかった。そのため次年度使用が生じた。2024年度には引き続き、加齢性難聴マウスにおける実験に必要な経費(マウス購入費用・試薬・受託実験解析など)や、当研究に関係する情報収集・成果発表の学会の旅費(日本耳鼻咽喉科頭頚部外科学会、耳科学会、 聴覚医学会など)、論文発表のための英文校正費・出版費に予算を使用する予定である。
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