2022 Fiscal Year Research-status Report
薬剤性難聴の感受性遺伝子検索による個人差および発症機序の解明
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20K09743
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Research Institution | National Center for Child Health and Development |
Principal Investigator |
守本 倫子 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 小児外科系専門診療部, 診療部長 (40286555)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
要 匡 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, ゲノム医療研究部, 部長 (40264288)
柳 久美子 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, ゲノム医療研究部, 研究員 (90294701)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 薬剤感受性遺伝子 / 感音難聴 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、小児固形腫瘍の治療に対して広く使用されている白金製剤で生じる難聴の原因について検討することを目的とした。今まで難聴に関連しているのは、使用した年齢や使用量と考えられてきたが、同じ条件で使用しても難聴になる場合とならない場合があり、これが個々の薬剤感受性によるものではないかと考えられた。そこで、本研究では、日本人患者において共通する白金製剤感受性のある遺伝子多型を検索することを目的とした。方法として、小児がん治療のため 白金製剤を使用している腫瘍センター4施設からも複数の検体を収集し、白金製剤使用と難聴誘発の有無、海外で報告されている白金製剤に対する薬剤感受性遺伝子多型(TPMT,COMR,ACYP2)の有無について解析を行った。また、これらの遺伝子多型は海外で原因とされている薬剤感受性遺伝子多型はもともとアジア人種には頻度が少ないものであるため、他に報告されている遺伝子多型の可能性と新規遺伝子多型の関与、さらにそれらの複合的な原因である可能性も検討していく必要がある。そこで、環境要因としては白金製剤を使用した年齢や使用量、性差、放射線治 療など、また新規遺伝子多型については全ゲノム解析を行い、可能性のある候補遺伝子多型を検討した。結果として、既知の遺伝子多型(TPMT,COMR,ACYP2)は、解析した小児例123例のうち、TPMTは4人(難聴あり)とACYP2が6人(難聴あり2人) に認められた。また、全ゲノム解析により、日本人にある一定の頻度で認められ、内耳にも関連していると考えられる遺伝子多型が複数挙げられた。COVIDのため検体収集に時間がかかったため、次年度はこれらの遺伝子多型と難聴との関連や、整合性などについて検討し報告を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVIDによる患者受診控えなどが検体収集に時間がかかってしまったことと、研究所と病院の往来が禁止されるなど、検体解析に支障をきたしたことが原因である。ただし、軌道に乗ってから概ね良好に収集ができているため、現在解析が行われている。
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Strategy for Future Research Activity |
既知の遺伝子が原因にはなっていない可能性、環境因子も複数組み合わせても危険因子レベルであり、薬剤性難聴が生じる原因に直接的につながっているわけではなく、薬剤性難聴発症機序解明にもつながらない。このことから、別の遺伝子が関与していることは明らかであり、現在突き止めている感受性遺伝子Xが関わっていることを機能解析で証明することが必要と感じている。今年度はその成果を挙げることに注力する予定である。
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Causes of Carryover |
検体解析がずれ込んでしまったことにより、翌年度に計上して検体解析を行う。また、今年度は研究成果を癌治療学会などの学会で報告し、論文報告することに使用を予定。
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