2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K09745
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
高原 幹 旭川医科大学, 医学部, 講師 (50322904)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 扁桃病巣疾患 / 掌蹠膿疱症 / IgA腎症 / 口蓋扁桃摘出術 / 口蓋扁桃 |
Outline of Annual Research Achievements |
(ア)臨床学的検討 日本口腔・咽頭科学会主導の扁桃病巣疾患診療の手引き作成において、委員長を拝命し、現在各委員と共同し作成を進めている。本書では、扁桃の免疫学的機能、代表的疾患である掌蹠膿疱症、IgA腎症の発症機序、それらの疾患に加えて、胸肋鎖骨過形成症、乾癬、IgA血管炎、PFAPA症候群、反応性関節炎などの各扁桃病巣疾患に対する扁桃摘出術の効果を検討した報告を集め、データーを検討し、表として作成し、解説文とともに記載した。 (イ)扁桃病巣疾患における扁桃細菌叢の検討 現在、当科で保存している扁桃組織からDNAを抽出、16s rRNA菌叢解析を外部委託会社と連携し行っている。現在、習慣性扁桃炎、掌蹠膿疱症、IgA腎症患者からの扁桃組織を各20例検討し、細菌叢の違いを種々の方面から検討している。 (ウ)ホーミングレセプターを介した病巣へのT細胞の浸潤 近年、IgA腎症の腎尿細管間質ではCXCR3陽性T細胞の浸潤を認めると報告されている。その発現を扁桃で検討した結果、IgA腎症患者では扁桃単核球のCD3+CXCR3+細胞数の割合が非IgA腎症患者と比較して有意に増加していた。また、末梢血の陽性細胞数の測定では、疾患群間での変化はないものの、扁桃摘出前後でIgA腎症群のみ低下する傾向が認められた。 (エ)IgA腎症扁桃における糖鎖不全IgA産生 IgA腎症においてヒンジ部糖鎖不全のIgAが病態に関与していることが知られている。IgA腎症患者の扁桃摘出前後の末梢血におけるIgAの糖鎖をGd-IgA1(Galactose-deficientlgA1)Assay KITにて解析した。半数に減少を認めたが、残りの半数は増加を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(ア)扁桃病巣疾患診療の手引き 作成自体はほぼ順調に進んでおり、すでに手引書自体は最終修正を行なっている段階である。ただし、出版社の選定に苦労しており、出版社からの発刊が難しければ、母体である日本口腔・咽頭学会の学会誌扱いで発刊される可能性もある。 (イ)扁桃病巣疾患における扁桃細菌叢の検討 データーは頂いており、解析をしているが、情報量が膨大のため、種々の解析方法が考えられ、その選択と解釈に苦慮している。個人的解析が厳しそうであれば、当大学の他の講座(公衆衛生など)とも連携をとり、検討を続ける。 (ウ)ホーミングレセプターを介した病巣へのT細胞の浸潤 末梢血のCD3+CXCR3+陽性細胞数にIgA腎症群と他疾患群間での違いはないことが判明した。予想外であったが、IgA腎症群のみで扁桃摘出後、細胞数が低下することも解り安堵した。症例数を増やすのと、末梢血での細胞数低下症例と扁桃摘出効果に相関があるか検討する。 (エ)IgA腎症扁桃における糖鎖不全IgA産生 半数は扁桃摘出術後逆に増加することに驚いた。これもその変化と扁桃摘出効果に相関がないか検討する。また、術後1ヶ月での結果であり、手術による扁桃の刺激による増加が関与している可能性も否定できず、術後3ヶ月での測定も追加し検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
(ア)扁桃病巣疾患診療の手引き作成 現在、作成文を日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会に提出している。学術委員会の審議を仰ぎ、修正等行い推薦を頂く。その後、最終確認を行い、可能であれば印刷会社を選定して、発刊に向けて準備を行う。 (イ)扁桃病巣疾患における扁桃細菌叢の検討 当大学の種々の講座と共同し統計学的解析を進める。 (ウ)ホーミングレセプターを介した病巣へのT細胞の浸潤 末梢血においてCXCR3陽性T細胞がIgA腎症患者にて術後低下していることが判明したため、症例数を増やし検討を進め、扁摘効果と差を認めるか検討を進める。 (エ)IgA腎症扁桃における糖鎖不全IgA産生 専用エライザキットによる扁桃摘出術前後における末梢血血清での糖鎖不全IgAの測定結果が得られたため、その結果と扁摘効果との相関を検討する。 (オ)IgA腎症扁桃におけるIgA過剰産生 BAFF、APRILが関与することが証明されたため、その産生細胞と思われるpDCを分離し、CpG-ODNの刺激によるBAFF、APRIL産生能を検討、IgA過剰産生のメカニズムを明らかにする。
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Causes of Carryover |
研究はほぼ順調に行われており、必要な研究諸剤も随時購入している。次年度使用額も10万円以下となっており、科研費は有効に活用されていると考えている。本年は形質細胞様樹状細胞分離キットを購入する予定であり、高額になると予想される。
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