2022 Fiscal Year Research-status Report
PPPDに対する聴覚伝導路を用いた感覚代行トレーニングの有用性の検討
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20K09751
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
大島 伸介 新潟大学, 医歯学系, 助教 (70632438)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀井 新 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30294060)
和田森 直 長岡技術科学大学, 工学研究科, 助教 (60303179)
野々村 頼子 東京慈恵会医科大学, 東京慈恵会医科大学医学部, 助教 (60807022)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 感覚代行 / PPPD / 重心動揺計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、前庭覚、視覚、体性感覚に加えて聴覚刺激を用いた感覚代行を第4の平衡情報として入力することにより、視覚入力、体性感覚入力の重みづけ、過剰反応をリセットし、PPPDの病態に即した新たな治療法を構築することである。 われわれは共同研究者である長岡技術科学大学工学部の和田森らとともに、聴覚刺激を用いた平衡覚の感覚代行デバイスの開発を行っている。まず試作機として新規平衡センサー(V-box)を開発した。V-boxは9軸のモーションセンサーを搭載し、ヘッドホンに固定して頭部の角速度を測定、得られたデータをタブレットへ転送して平衡情報を音刺激に変換し、ヘッドホンから音刺激として出力する。V-boxの感知角度に閾値を設定し、閾値以下の頭部偏位が少ないと無音、閾値以上に偏位するとヘッドホンから傾きに応じて音が出るように設定した。このデバイスを用いて、感覚代行の有無による視覚依存性を表すラバーロンベルグ率、体性感覚依存性を表す閉眼ラバー比の変化を検討した。対象はめまい症状のない健常者6名で感覚代行の無音領域を3°, 1.5°に設定し、それぞれの重心動揺検査でラバーロンベルグ率、閉眼ラバー比を比較検討したところ、ともに3°、1.5°の間に有意差を認めなかった。 さらに使いやすいシステムを目指し、速度センサーを内蔵するイヤホンであるapple社のAirpods proを使用して同様の測定を行った。ラバーロンベルグ率、閉眼ラバー比ともに感覚代行の有無、無音領域の角度閾値の相違による視覚依存性、体性感覚依存性に有意差を認めなかった。 PPPDの病態に即して、感覚代行の効果を従来の既存の重心動揺検査では評価することが難しく、平衡機能評価の新たな指標が必要と考えている。具体的には視覚刺激により静的平衡維持が難しい状態での評価や新規開発の平衡機能検査機器を用いた測定を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平衡センサーであるV-boxは新規開発であり、その性能の検証に時間を要した。センサーの精度、装着部位による相違、重心動揺検査を同時測定した結果、動揺の大きさは同様にラバー負荷、閉眼で大きくなることを確認した。しかし、小型化や審美性、bluetooth接続の安定性、インターフェースを向上させる目的で、V-boxからairpods proに変更した。Airpods proでV-boxと同様の測定を行い、再現性を確認するのに時間を要した。 センサー、伝達系、制御系を可能な限りシンプルにすることにより感覚代行デバイスを用いたトレーニングのコンプライアンスが向上し、より有効な治療となるため、小型化や審美性を追求し、改良を重ねている。
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Strategy for Future Research Activity |
Airpods proを利用することにより、感覚代行トレーニングに重要な簡便性と継続性を得られた。今後は、このシステムを用いてPPPDの病態に即した平衡機能評価の指標を明らかにし、感覚代行トレーニングの有無によりその指標を比較して感覚代行の有用性を検討したいと考えている。すでに視覚誘発刺激下の重心動揺検査を行ったが、感覚代行の有用性は明らかとは言えず、従来の重心動揺検査による静的平衡機能検査の限界を感じている。PPPDの病態で立位、体動によるめまい症状が誘発されるため、動的平衡機能検査も評価すべきと考えている。現在動的平衡機能検査にはモーションキャプチャなどの大掛かりな装置を要し、リハビリの評価として行うには簡便でない。われわれはシート状の圧力センサーを靴の中敷きのように装着し、歩きながら足底圧を測定する装置の新規開発を検討している。 また、患者に寄り添った機器の開発を行い、トレーニング成果を高めることを最終目標としており、感覚代行聴覚刺激は、高齢者でも直感的に知覚できるように立体音響技術を用いたり、トレーニングに対する意欲向上のためスマートフォンアプリ「iめまい日記」で自覚症状やトレーニング履歴を管理できるようにしたいと考えている。
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Causes of Carryover |
(理由)これまでデバイスの開発が中心で仕様を変更しながら、正常被検者のデータ採取を繰り返し、デバイス性能の検証に時間を要している。大きく仕様を変更する必要が生じた場合には、高額な部品を使用する可能性もある。また、仕様が確定した後には同一デバイスを複数台作成する必要がある。 (使用計画)感覚代行装置の構成物品、air pods proやその他のイヤホン、ヘッドホン、コントロールするPCやタブレット端末、新規動的平衡装置の設計、開発のために各種センサー機器、ハイスピードカメラなど映像機器に使用する。また、消耗品等や研究成果発表や情報収集のための学会参加時の旅費などにも使用する予定である。
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Research Products
(1 results)