2021 Fiscal Year Research-status Report
macular sensitivity changes depending on capillary dropout and macular edema
Project/Area Number |
20K09770
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
村田 敏規 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (50253406)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 光干渉断層計 / アンギオグラフィー / 網膜静脈分枝閉塞症 / 網膜感度 / 血管密度 |
Outline of Annual Research Achievements |
Optical coherence tomography Angiography(OCTA; 光干渉断層撮影アンギオグラフィー)は網膜血管を、内層から外層へ層別に三次元的に描出可能である。網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)では、静脈閉塞部位の血流密度(PD)が低下する。昨年度、PDは閉塞部の網膜感度(RS)と正の相関があることを報告した。(Rachima S, Hirabayashi K, Murata T et al. Prediction of post-treatment retinal sensitivity by baseline retinal perfusion density Sci Rep 2020 Jun15;10(1):9614) 本年度は、網膜静脈分枝閉塞症で、閉塞及び出血が見られない側の方が、治療後視力に関係するのではないかという仮説を検証し、この仮説が正しいことを報告した。(Relationship between central retinal sensitivity, thickness, perfusion density and visual acuity in patients with branch retinal vein occlusion. Hirabayashi K, Murata T Acta Ophthalmologica 2022 doi: 10.1111/aos.14841) 中心窩の網膜感度を、中心から2度の4点で測定し、網膜静脈分枝閉塞症に罹患している側の2点と罹患していない側の2点の網膜感度と視力の関係を検証した。視力は、罹患していない側の2点の網膜感度と相関した。遷延する黄斑浮腫は非罹患側の視細胞を不可逆性に障害して、視力の回復を困難にする。早期の治療開始で、非罹患側の網膜感度が低下しないようにすべきである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来、網膜静脈分枝閉塞症による黄斑浮腫は、自然経過がよく視力の自然回復が期待されるとされていた。この視力回復の鍵となるのは、静脈が閉塞した結果出血している側ではないことを明らかとした。非罹患側の中心窩網膜の網膜感度は、原則同部位に血管閉塞はないので、虚血による網膜感度低下は生じない。非罹患側の網膜感度は、罹患側の静脈閉塞による出血にともなう血漿成分が流入することで、黄斑浮腫が生じて低下する。今回我々は、中心窩の網膜感度を、中心から2度の4点で測定し、網膜静脈分枝閉塞症に罹患している側の2点と、罹患していない側の2点の網膜感度と、視力の関係を検証した。視力は、罹患していない側の2点の網膜感度と相関した。 遷延する黄斑浮腫は非罹患側の視細胞を不可逆性に障害して、視力の回復を困難にする。罹患側の血管閉塞の程度すなわち静脈閉塞部位の血流密度(PD)は網膜感度に相関して、罹患側の網膜が担当する視野の、霞や暗さにつながりうる。しかし、全体的な視力や患者の自覚症状に最も影響するのは、非罹患側の網膜感度であることが明らかになった。非罹患側の網膜感度は、早期から抗VEGF薬(vascular endothelial growth factor)を硝子体注射することで治療できることが知られている。早期から治療を開始して、非罹患側の網膜感度を維持することが大切であることを、世界で初めて報告できたので、研究は順調に進展していると判定する。
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Strategy for Future Research Activity |
網膜静脈分枝閉塞症では、罹患側の黄斑部網膜は、血管閉塞と出血により網膜感度が低下する。その一方で、非罹患側は網膜血管の閉塞が生じないので、理論上は非罹患側の網膜感度は低下しない。しかし、罹患側の出血から流れ込む血漿成分により、漿液性網膜剥離と嚢胞様黄斑浮腫が生じ(黄斑浮腫)、視細胞が破壊されなければ、非罹患側の網膜感度は保たれる。すなわち、視力予後は保たれる。 患者の視力予後を決めるのは黄斑浮腫をいかに早く治療開始して、すみやかに浮腫を吸収させられるか否かにかかっている。第一選択の治療は抗VEGF薬硝子体注射であるが、高価であり頻回の通院が必要であり、すべての患者さんに容易行える治療ではない。少しでも抗VEGF薬の必要量を少なくするために、その病態を更に明らかにして、抗VEGF薬を少なくする方法を検討することを本年度の目標とする。 黄斑部の中心窩を中心とする1mmの平均網膜厚(中心窩網膜厚)が300ミクロンを超えると視力が低下する。中心窩に1mm以内に毛細血管瘤が形成されると同部位から漏出がおこり、黄斑浮腫は難治となる。抗VEGF薬を連続投与する以外に、有効な治療法がなくなるという仮説を立てた。本年度はこれを画像検査を用いて検討する。 黄斑浮腫は網膜血管からの漏出から、漏出液の網膜中心静脈への排水の度合いにも影響される。中心窩から網膜中心静脈の開存が必要条件となる。この静脈は、排水静脈,あるいは rescue veinと呼ばれるが、共通の呼称がなく、その役割を詳細に検討した研究は存在しない。従来、造影剤を必要とした蛍光眼底造影は繰り返し施行することが困難なため詳細で頻回の検査は困難であった。これに対し、造影剤を使わず網膜血管を描出できるOCT-Angiographyを用いることで、非侵襲性に毎日でも血管を造影できるようになり、本研究が可能となった
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Research Products
(3 results)