2022 Fiscal Year Research-status Report
角膜内皮細胞運命を規定する代謝リプログラミングの階層性と組織機能不全病態の解明
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20K09778
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
丸山 悠子 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (60516003)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上野 盛夫 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40426531)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 角膜内皮細胞 / ミトコンドリア / エネルギー代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
環境因子(分泌型miRNA・Exosome)によるエネルギー代謝特性の変動の明確化のために前房水中のmiRNA特性を検討した。角膜内皮機能不全(水疱性角膜症:BK)患者と白内障患者(正常対照者:CAT)の前房水中のmiRNAを解析した。BK群とCAT群のそれぞれの前房水に高発現する上位50のmiRNAを抽出し比較した。BK群のみで抽出されたmiRNAは24種、BK群とCAT群の双方で抽出されたmiRNAは73種、CAT群のみで抽出されたmiRNAは24種であった。miR-184, miR-24-3p, miR-92b-5pはBK群とCAT群の双方で抽出され、BK群に比してCAT群で有意に高発現であった。培養ヒト角膜内皮細胞亜集団で、相転移細胞に比して成熟分化細胞で高発現しているmiR34aはBK群とCAT群の双方で低発現であった。miR-184, miR-24-3p, miR-92b-5pは培養ヒト角膜内皮細胞の培養上清中でも高発現で、miR-184, miR-24-3pは相転移細胞に比して成熟分化細胞で有意に高発現であった。miR-184は培養上清から抽出した細胞外小胞(EVs)中でも高発現であった。細胞間コミュニケーションにおいてEVs含有miRNAは効率的に働くとされている。miR-184 inhibitorが培養ヒト角膜内皮細胞亜集団のうち成熟分化細胞において、ミトコンドリア膜電位の脱分極を誘導し、生合成に係るperoxisome proliferator-activated receptor-gamma coactivator 1-α (PDC1α), voltage-dependent anion channel 1 (VDAC1), mitochondrial transcription factor A (TFAM) の発現を低下させることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Covid-19の流行で研究進行のために必要な米国アイバンクからのドナー角膜組織の入手が困難と滞たことが主たる理由である。ドナー角膜組織から培養角膜内皮細胞を作成し実験に使用しているため予定した実験計画に必要な十分な細胞を得ることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
エネルギー代謝特性の変化と細胞競合現象との関連評価を行う。環境適応能力で勝る細胞が劣る細胞を能動的に排除する「細胞競合」の破綻が、培養ヒト角膜内皮細胞の代謝階層性に依拠して起こるか否か、そして角膜組織の機能不全病態に係るか否かの検証に挑戦する。成熟分化細胞と相転移細胞で細胞が内含する全てのミトコンドリアを染色するMTG染色と膜電位を維持したもののみを染色するTMRM染色を比較し、細胞競合の病態増悪における役割を明確にする。 環境因子(分泌型miRNA・Exosome)によるエネルギー代謝特性の変動の明確化する。培養系で推定された代謝産物の測定を、角膜内皮機能不全患者において前房水・血漿成分の代謝産物の測定を実施し、上述知見が、患者病態と直接的に関連するか照合する。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症の蔓延により米国アイバンクからの研究用ドナー角膜組織に入手が滞り研究を実施できなかったために次年度使用額が生じた。現在のところ、米国アイバンクからの研究用ドナー角膜の入手に使用する予定である。 万一、今年度も研究用ドナー角膜組織の入手が滞った場合には、前房微小環境(前房水)中の代謝産物の網羅的解析に使用することを検討する。
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