2020 Fiscal Year Research-status Report
Variational Bayesを用いた10-2視野の予測および測定
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20K09785
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村田 博史 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80635748)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朝岡 亮 聖隷クリストファー大学, 看護学研究科, 臨床准教授 (00362202)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 緑内障 / 視野 |
Outline of Annual Research Achievements |
緑内障とは視野欠損が不可逆的に進行する疾患であり、したがって視野検査を定期的に行い視野欠損の進行を経過観察することが治療のうえで必須である。視野検査を正確に行うことは重要であることは言うまでもないが、実臨床においては測定時間も非常に重要である。測定時間が長いと検査員、患者の負担が大きくなり、また疲労による測定感度の低下を引き起こすため、測定時間が長くなると視野検査の正確性を損なうという面がある。しかしながら、測定時間の短いアルゴリズムとは本質的に視野検査の正確性を犠牲にして高速化を行うものであり、したがって正確性と測定時間の両立が視野検査には求められる。本年度の研究では、当該アルゴリズムの高速版の検証について行った。 現在ハンフリー視野計ではSITA-Standard、およびSITA-Fastアルゴリズムが広く使用されている。SITA-Standardアルゴリズムは測定精度の面から緑内障研究や緑内障専門医の診療に広く使用されている。当研究者らはこれまでハンフリー視野計のSITA-Standardに匹敵するようなアルゴリズムの開発を行い、そのアルゴリズムはSITA-Standardと同等の再現性を有し、なおかつ測定時間を短縮することに成功した。 一方で、SITA-Standardアルゴリズムの測定には片眼5-10分程度の測定時間を必要とするため、実臨床の場ではSITA-Fastアルゴリズムが使用されることが多い。今年度の研究において、以前開発したアルゴリズムの測定打ち切り基準を変更することで、SITA-Fast相当のアルゴリズムを作り、その測定精度や測定時間について検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述のとおり本年度の研究では、当該アルゴリズムの高速版の検証について行った。今回打ち切り基準を2通り用意し、それぞれsmart Strategy α、およびsmart Strategy α+とした。すなわち、以前開発した測定アルゴリズムを元に改変を行うことで測定時間の短縮を行った。前述の通りアルゴリズムの改変による測定時間の短縮は視野検査の精度を犠牲にするものであるため、新たに作成したアルゴリズムの再現性、および測定時間について検討を行った。 2つのうちsmart Strategy α+においてSITA-Fastよりも良い性能を示した。具体的には、再現性についてはSITA-Fastおよびsmart Strategy α+の間に有意差はなかったが(p=0.74), 測定時間については有意にsmart Strategy α+の方が短かった(p<0.001)。したがって、今回ハンフリー視野計のSITA-Fastよりも性能の良いアルゴリズムの開発に成功したということができる。 smart Strategy αについては再現性はSITA-Fastよりも測定時間は短いものの(p=0.0027)再現性はSITA-Fastに劣っていた(p=0.011)。緑内障病期と再現性の関連等々の解析を行なたが、smart Strategy αがSITA-Fastに再現性で劣っていた原因については解明できなかった。今後さらなる検討により原因が判明すれば視野検査アルゴリズムのさらなる改良につながることが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の通り、smart Strategy αについては再現性はSITA-Fastよりも測定時間は短いものの再現性はSITA-Fastに劣っていた。測定時間と再現性はトレードオフの関係にあることを考慮すると妥当な結果である可能性もあるが、一方でsmart Strategy α+が再現性で同等かつ測定時間で優れていたことを考慮すれば、さらなる検討を加える意味はあると考えられる。これにより再現性においてsmart Strategy αが劣っていた原因が判明すれば、視野検査アルゴリズムのさらなる改良につながる考えられる。 また、ハンフリー視野計では近年SITA-Fasterアルゴリズムが搭載されている。今後このアルゴリズムが主流となるかは不明であるが、これに相当する測定時間のアルゴリズムについても開発をすすめる予定である。 具体的には以前のアルゴリズムのときと同様、ハンフリー視野計にてSITA-Fasterアルゴリズムを用いて視野検査を行い、同日に我々のアルゴリズムでも視野検査を行う。3か月後には測定順を入れ替えて両アルゴリズムで再度視野測定を行い、二つの測定時間、および再現性について解析を行う。 また、10-2視野のアルゴリズムについては現在再学習を行っており、これについても学習が終わり次第同様の検討を行う予定である。また、各患者の過去の視野検査の結果を利用できる場合、これらを利用することで視野検査の測定時間をされに短縮できることが期待されるため、これについても開発を進める予定である。
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Causes of Carryover |
視野検査は暗室に被験者を入れて行うことになり、換気の悪い状況で検査をすることになる。新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、視野検査を一時見合わせたことで、視野の測定に遅れが生じており、それにともない必要とする物品や謝礼金等々の予定していた経費が必要なくなったという経緯がある。さらに新型コロナ感染症のため、国際会議等が中止、もしくはオンラインでの開催となり、本来であれば発生していた旅費も必要無くなった。 今後は視野の測定をするにあたり、検査員への謝礼、および解析に使用するワークステーション、ソフトウエア等の購入が必要となり、それに研究を充てる予定である。また、国際会議等がオンサイトに戻った場合は積極的に参加し、国際学会にて研究成果を発表し、今後も研究に役立てる予定である。
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Research Products
(2 results)