2021 Fiscal Year Research-status Report
AM-RAMP2系、AM2-RAMP2系を標的とした、眼内病的血管制御法の開発
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20K09803
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
新藤 優佳 信州大学, 医学部, 研究員 (50507506)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 眼内病的血管 / アドレノメデュリン / RAMP |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国における高齢者の失明においては、糖尿病網膜症、滲出型加齢黄斑変性といった、眼内病的血管新生病が上位を占めている。両者における病的新生血管は構造が脆弱であり、血管透過性が高く、浮腫や出血を生じやすい。血管外滲出物貯留は、慢性炎症と網膜下の線維化を生じ、重篤な視力障害の原因となる。 我々は、生理活性ペプチド、アドレノメデュリン(AM)と、その受容体活性調節タンパクであるRAMP2のノックアウトマウスが、共に、血管形成異常と浮腫のため胎生致死となることから、AM-RAMP2系が血管の正常な発生に必須であること、さらにAM-RAMP2系が、生後の網膜血管の発達にも関連していることを明らかとしてきた。一方、AMのファミリーとして新たに同定されたインターメディンは、アドレノメデュリン2(AM2)とも呼ばれ、AMに類似した構造を有し、眼内にも存在するがその機能は不明である。 本研究では、AM-RAMP2系およびAM2-RAMP2系の眼内における病態生理学的意義、特に網膜血管バリア維持機能、抗炎症作用、抗線維化作用とそのメカニズムを解明し、網膜浮腫や線維化に対する新たな治療法に展開することを目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
滲出型加齢黄斑変性(AMD)は、脈絡膜新生血管(CNV)からの滲出液漏出や出血により視力障害を引き起こす。本研究では、AMDにおけるAM-RAMP2系の病態生理学的意義を検討した。 AMDの病態モデルであるレーザー誘導脈絡膜新生血管(LI-CNV)をマウス眼へ誘導した。AMノックアウトマウス(AM+/-)、RAMP2ノックアウトマウス(RAMP2+/-)では、野生型マウス(WT)と比較してCNVは拡大し、網膜下線維化の悪化を認めた。反対に、LI-CNVを誘導したマウスにAMを硝子体内投与したところ、CNVの縮小、網膜下線維化の改善を認めた。LI-CNVを誘導した脈絡膜では、TGF-β、CXCR4などの線維化関連因子の発現が上昇したが、AM投与により低下した。 LI-CNV モデルにおいて、TGF-β阻害剤(SB431542)、CXCR4阻害剤(Plerixafor)を投与したところ、RAMP2+/-とWTの間でみられたCNVと網膜下線維化面積の差は消失した。さらにRAMP2+/-では、LI-CNVモデルにおいて、脈絡膜のRhoA、ROCK1の発現亢進を認めた。SB431542、あるいはROCK1阻害剤(Y27632)を投与すると、脈絡膜におけるRhoA、ROCK1の遺伝子発現は低下した。 ヒト網膜色素上皮細胞(ARPE19)にTGF-βおよびTNF-αを投与したところ、上皮系マーカーの発現減少と間葉系マーカーの発現亢進が見られ、上皮間葉転換(EMT)が誘導されたが、AMの投与により抑制された。また、AMの投与は、TGF-β、RhoA、ROCK1、CXCR4の遺伝子発現を抑制した。 以上の結果から、AM-RAMP2系は、TGF-β-RhoA-ROCK1-CXCR4経路を介するEMTを抑制することで、AMDにおける網膜下線維化を改善することが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
① レーザー誘導脈絡膜血管新生モデルの検討 野生型および、AM、AM2、RAMP2ノックアウトマウスの片眼視神経乳頭周囲網膜にアルゴンレーザー照射を行い、Bruch膜を穿破する。7日後、21日後に、麻酔下でFITC-Dextranを心臓から灌流する。フラットマウント標本を作成し、レーザー瘢痕に対する線維化面積および脈絡膜新生血管の面積の評価を行う。さらに各種抗体を用いた免疫組織染色を行い、網膜、脈絡膜の質的変化を評価する。血管新生、炎症、線維化に関連する遺伝子の発現をリアルタイムPCR法にて定量評価する。次に野生型マウスに浸透圧ポンプを用いてAM, AM2, PBSを持続投与し、レーザー照射7日後の脈絡膜/強膜複合体の検体を採取し、Clariom S Array (KURABO)による網羅的遺伝子発現解析を行う。
② 実験的自己免疫性ぶどう膜炎モデルの検討 野生型および、AM、AM2、RAMP2ノックアウトマウスを用いて、ヒト IRBP ペプチド、完全フロイトアジュバンド、Pertussis Toxinを尾部に皮下注射し、実験的自己免疫性ぶどう膜炎モデルを作成する。眼底鏡を用いて、経時的に、網膜血管炎や滲出斑、網膜下出血や硝子体出血を評価する。免疫後21日眼目の眼球を用いて組織標本を作製し、リンパ球の浸潤と組織の損傷を元に、組織学的スコアを算出する。血管新生、炎症、線維化に関連する遺伝子の発現をリアルタイムPCR法にて定量評価する。次に野生型マウスにぶどう膜炎を惹起する。浸透圧ポンプを用いてAM, AM2, PBSを持続投与し、脈絡膜/強膜複合体の検体を採取し、Clariom S Array (KURABO)による網羅的遺伝子発現解析を行う。
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[Journal Article] Adrenomedullin-RAMP2 system ameliorates pulmonary fibrosis by regulating TGF-β-Smads pathway and differentiation of myofibroblasts.2021
Author(s)
Wei Y, Tanaka M, Sakurai T, Kamiyoshi A, Ichikawa-Shindo Y, Kawate H, Cui N, Kakihara S, Zhao Y, Aruga K, Sanjo H, Shindo T.
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Journal Title
Endocrinology.
Volume: 162
Pages: 1-22
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Adrenomedullin-RAMP2 and -RAMP3 systems regulate cardiac homeostasis during cardiovascular stress.2021
Author(s)
Cui N, Sakurai T, Kamiyoshi A, Ichikawa-Shindo Y, Kawate H, Tanaka M, Tanaka M, Wei Y, Kakihara S, Zhao Y, Aruga K, Kawagishi H, Nakada T, Yamada M, Shindo T.
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Journal Title
Endocrinology
Volume: 162
Pages: 1-20
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Adrenomedullin-RAMP2 system ameliorates subretinal fibrosis by suppressing epithelial-mesenchymal transition in age-related macular degeneration.2021
Author(s)
Tanaka M, Kakihara S, Hirabayashi K. Imai A, Toriyama Y, Iesato Y, Sakurai T, Kamiyoshi A, Ichikawa-Shindo Y, Kawate H, Tanaka M, Cui N, Wei Y, Zhao Y, Aruga K, Yamauchi A, Murata M, Shindo T.
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Journal Title
age-related macular degeneration. Am J Pathol.
Volume: 191
Pages: 652-668
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Pathophysiological roles of adrenomedullin-2 in mouse model of ocular neovascularization.2021
Author(s)
Kakihara S, Tanaka M, Hirabayash K, Imai A, Toriyama Y, Iesato Y, Sakurai T, Kamiyoshi A, Kawate H, Ichikawa-Shindo Y, Tanaka M, Murata T, Shindo T.
Organizer
The Association for Research in Vision and Ophthalmology 2021
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