2020 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子治療による神経保護・再生を活用した緑内障の治療研究
Project/Area Number |
20K09820
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
木村 敦子 公益財団法人東京都医学総合研究所, 疾患制御研究分野, 主任研究員 (60569143)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 緑内障 / 軸索再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
緑内障は我が国における最大の中途失明原因であり、世界の緑内障患者は2040年には1億2千万人に上ると予想されている。緑内障は眼圧の上昇などの影響により視神経軸索が障害を受け、その細胞体である網膜神経節細胞(RGC)が死に至ることで視覚障害が起きる神経変性疾患である。近年ではRGC死よりも前に樹状突起の退縮が起こり、神経回路が切断され視機能障害を起こすとも考えられている。本研究では、障害を受けた軸索や退縮した樹状突起を再生させることにより、一度失った視機能を回復することを目指している。今回代表者らは、緑内障の治療薬として承認された点眼液であるRipasudilに注目した。RipasudilはROCK阻害薬のひとつであり、以前我々はRipasudil点眼が緑内障モデルマウスにおいて、眼圧非依存的作用によって神経保護(RGC保護)効果を発揮することを明らかにした。Rho-ROCKシグナル経路が軸索再生を阻害することは報告されているが、Ripasudilが視神経軸索の再生に与える影響はわかっていない。そこで、視神経挫滅モデルを用いてRipasudilの点眼による視神経軸索の再生効果を検討した。視神経挫滅処置を施したマウスに14日間毎日1回2% Ripasudilの点眼投与を行い、治療効果を解析した。その結果、Ripasudil点眼群では、視神経の軸索再生が促進されることが明らかとなった。ウエスタンブロッティングによるタンパクの発現量の解析から、Ripasudil点眼群ではRho-ROCKシグナル経路の下流で微小管重合を抑制するCRMP2と、アクチンフィラメントの脱重合を促進するcofilinのリン酸化が抑制されていることがわかった。さらに、Ripasudil点眼が視神経挫滅モデルにおいてもRGCの保護効果を発揮することが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
視神経挫滅モデル動物において、Ripasudilの治療効果を明らかにし、視神経再生に関する研究に大きな進展がみられたため。以上の成果は国際雑誌に報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き中枢神経の軸索再生機序を解明するための研究を進めていき、遺伝子治療による効果の検討も進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
(理由) 研究経費の節約に努めた結果、わずかながらその成果が現れ、次年度使用額が生じたものである。 (使用計画) 次年度経費に組み入れて、特に物品費として使用予定である。
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Research Products
(8 results)