2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of the platform of gene therapy for inherited retinal diseases using gene-editing technologies
Project/Area Number |
20K09823
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩川 外史郎 東京大学, 医科学研究所, 特任研究員 (30638648)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 遺伝性網膜変性症 / エクソンスキッピング / 網膜色素上皮 / ゲノム編集技術 / ヒトiPS細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度の主な目標は、hiPSCから網膜色素上皮(RPE)への分化系の最適化であった。具体的な方法としては、RPEへ分化した際に蛍光タンパク質を発現する細胞株を作製し、蛍光を指標とした細胞の分取を計画していた。十分実現可能な計画であったが細胞株の作製などに短くはない時間を要するため、より簡便な均一化の方法として、RPEが持つ特徴である、脱分化・増殖・再分化の利用を検討した。多角形で色素を帯びたRPE様の細胞が確認されたのちに、細胞をプレートから剥離および分離し、比較的低密度で播種し培養を行なった。その結果、形態の変化と増殖性が認められ(脱分化・増殖)、1週間程度の培養でプレート内を細胞が敷き詰め、3ー4週間程度の培養で、RPE様の形態を示す細胞が数多く認められた(再分化)。さらにRT-qPCRや免疫細胞染色によりRPEへの分化が確認され、RPEへの分化系の最適化が図れたと考えられる。 RPEの機能評価系として貪食能の評価系を構築した。生体内でRPEは日常的に視細胞の外節を貪食している。そこで既報を参考にしながら、ブタの眼球から視細胞の外節を分離し、蛍光色素で標識されたビーズと反応させた後に、血清で食作用が活性化されたRPEに供した。24時間後にビーズを取り込んだ細胞の割合をフローサイトメトリーにより評価したところ、約50%の細胞がビーズを取り込んでおり、貪食作用が確認できた。先行研究で、RPEが変性する疾患の原因遺伝子であるCHMの変異株や標的エクソンのスキップ株は樹立しており、貪食能や細胞死の評価を行なった。その結果、酸化ストレス条件下で、変異株では貪食能の低下や細胞死の促進が引き起こされ、スキップ株では貪食能の改善傾向が認められた。以上からCHMをモデルとして遺伝子の変異によるRPEの機能低下やスキップの影響が評価可能であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度中に達成を計画していた分化系の改善はある程度図れたと考えられ、令和3年度に予定していたRPEの機能評価系を構築できたため、進捗状況は順調と言える。RPEには、脱分化・増殖・再分化のサイクルを回す能力があることは既に知られている。この性質を活かして、RPEを含む細胞を継代し比較的低密度で培養することで、増殖性を示すRPEが主たる構成細胞となり、均一化が図れるのではと考えた。 RPEの貪食能の評価系は様々な例があるが、利用可能な機器類などを考慮して適宜取り入れた。蛍光ビーズを培地中に添加しただけではビーズの取り込みはほとんど認められなかったが、ブタの視細胞の外節とビーズを混ぜたり、RPEの食作用を血清で活性化させたりすることでビーズの取り込み能を改善できた。RPEが変性する遺伝性疾患の原因遺伝子としてCHMが知られている。先行研究でCHMの機能不全を引き起こすと期待される変異株や標的エクソンのスキップ株が樹立されていた。構築した貪食能の評価系を用いたところ、3ヶ月程度分化させたRPEでは変異やスキップが貪食能や細胞死に及ぼす影響は認められなかったが、興味深いことに酸化ストレス条件下では、変異による貪食能の低下や細胞死の促進が示され、変異で低下した貪食能はスキップによって改善される傾向が見られた。この結果は、CHMの変異により引き起こされるRPEの変性に酸化ストレスが関与している可能性やエクソンスキッピングの有効性を示唆する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の標的遺伝子であるMYO7AやABCA4の変異株の作製とその機能評価を行う。MYO7Aに関しては、公共データベース(https://bravo.sph.umich.edu/freeze8/hg38/など)を参考に比較的高頻度のナンセンス変異が報告されていてかつ機能への影響が大きいことが予想されるエクソンを絞り込んでいる。また変異株を作製するために、標的エクソンに対するgRNAのデザインを行い、高頻度で変異を導入可能なgRNAを見出している。この細胞をRPEへ分化させ貪食能などの機能評価を行う。同様に、ABCA4に関しても、標的エクソンを絞り込みや変異の導入を試み、RPEの機能評価を行う。機能評価系に関しては、貪食能だけでなく、それぞれの遺伝子の機能に基づいた評価系の構築を試みる。
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