2020 Fiscal Year Research-status Report
遊離D-グルタミン蓄積による網膜神経細胞および神経回路修飾の生理学的解析
Project/Area Number |
20K09838
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
大熊 真人 藤田医科大学, 医学部, 講師 (50329710)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 網膜 / パッチクランプ / イオンチャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は網膜の神経細胞におけるD-アミノ酸の効果を調べることを目的に、ホールセルパッチクランプ法による電気生理学的解析 および、enzyme-linked fluorescent assay法によるグルタミン酸測定を行うものである。初年度はパッチクランプ法による網膜細胞の電気記録を中心に研究を進めた。まず、新規データ取得装置(Molecular Devices:Digidata 1550B1)を購入し、電気記録用の装置を更新した。パッチクランプ記録では、網膜細胞を脱分極刺激して電位依存性イオンチャネルによる電流を計測した。現在までに、イモリ網膜細胞において 種々のD-アミノ酸の中でD-グルタミン存在下において最も電位依存性内向き電流が減少する記録が得られている。これはD-アミノ酸によりイオンチャネルが修飾される可能性を示唆する。また、この網膜でのパッチクランプ法をスライス標本および分化誘導細胞に応用し イオン電流を記録した結果が、それぞれ 英文誌に掲載された。カルシウムチャネルによる応答が主であるヒト網膜双極細胞でのナトリウムチャネルの存在は 網膜の情報伝達および修飾経路の可能性を増やし、虹彩由来細胞の神経分化は網膜細胞の発生過程や相互作用を考える上でも重要な知見となる。グルタミン酸測定については、ペリスタルティックポンプ(エムエス機器:MINIPULS3 MP-2)による細胞外液灌流系を作成した。次年度以降はこの系を用いて網膜スライス標本におけるグルタミン酸放出の測定を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は所属する研究室の改組があり、それに伴う工事や講義等の変更,負担増のため、想定していたよりも当該研究の実験作業に携わることができなかった。そこで初年度に予定していたパッチクランプ記録用データ取得装置の更新に加え、次年度以降に研究を進めるグルタミン酸可視化実験で利用するペリスタルティックポンプによる細胞外液灌流系を作成し、実験設備を充実させた。また 関連する網膜研究について 可能なものを進めたところ、網膜スライス標本における電位依存性ナトリウムチャネルに関する研究(A subset of cone bipolar cells expresses the Na+ channel SCN2A in the human retina. Exp Eye Res, 2021)および虹彩からの神経分化誘導細胞でのイオン電流および活動電位発生の研究(Novel technique for retinal nerve cell regeneration with elec-2 trophysiological functions using human iris-derived iPS cells, Cells, 2021)が英文誌に掲載された。研究課題に直結する実験は、D-グルタミンによる電位依存性内向き電流の修飾結果が得られだしたばかりだが、関連研究成果も加味して判断し、“おおむね順調に進展している”と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度準備したパッチクランプ記録装置およびenzyme-linked fluorescent assayによるグルタミン酸可視化系を用いて、細胞レベルでの研究を中心に進めて行く予定である。これらの測定系は 同じ実験セットアップ内で使用できるように改装し、改組された研究室内でも継続して網膜実験ができるよう工夫する。また、実施計画ではD-アミノ酸を含む飼料を用いて 生態環境に近い条件下での蓄積試料作製を考えていたが 現状では難しいため、細胞・組織レベルでの実験に留めるか、点眼薬等で代用できないか等 検討している。さらに、研究室改組後の新規研究グループは中枢神経系の研究が主であるため、これらのノウハウも吸収して本研究遂行に活かしたいと考えている。
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Causes of Carryover |
2020年度は コロナ禍による学会活動の変化により、Web開催で旅費が発生しない場合や、参加自体を取りやめた場合があった。また、前述の通り 所属研究室の改組により 研究の遂行に計画との差異が出たため、次年度使用額が生じてしまった。本年度は 計画を適宜見直し、生じた次年度使用額は主に実験関係の物品費として使用する方向で、有効に活用していきたいと考えている。
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Research Products
(2 results)