2021 Fiscal Year Research-status Report
遊離D-グルタミン蓄積による網膜神経細胞および神経回路修飾の生理学的解析
Project/Area Number |
20K09838
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
大熊 真人 藤田医科大学, 医学部, 講師 (50329710)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 網膜 / パッチクランプ / イオンチャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は網膜の神経細胞における情報修飾の効果を調べるため、D-アミノ酸を指標に生理学的な研究を行っている。2021年度は初年度に更新した電気記録用装置を使用して、パッチクランプ記録での解析を進めた。アカハライモリの網膜細胞において、D-グルタミン存在下で電位依存性内向き電流が減少する記録が得られていたが、これに引き続き 電流固定条件下で活動電位の記録を試みた。この結果、大きな電流注入で活動電位を発生する細胞の一部で、D-グルタミン存在下では閾値付近の小さな刺激では活動電位が発生しなくなった。網膜において活動電位を発生させる主な細胞は神経節細胞である。この結果は、D-グルタミンにより神経節細胞の活動電位が抑制される可能性を示唆する。また、網膜でのパッチクランプ記録法を虹彩由来のES細胞から誘導した試料にも適用し、電位依存性イオン電流や活動電位を記録して神経細胞への分化を確認している。未熟な神経節細胞での知見は、網膜細胞種の分化や情報修飾物質とイオンチャネル等の相互作用を検討する際の可能性を増やすと考えている。現在、この結果を英文誌に投稿中である。 本研究課題のもう一つの測定法である、enzyme-linked fluorescent assay法によるグルタミン酸放出の測定では、投与を試みた試薬のうち一部のホルモンでグルタミン酸放出の変化が見られた。主目的のD-アミノ酸による応答ではないが、この結果は ホルモンの濃度変化によって網膜での応答が変化し、情報が修飾される可能性を示唆する。現在、本結果を中心とした報告も検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度も所属研究室改組の影響が大きく、想定していたよりも当該研究の実験に携わることが難しかった。このため、研究課題に直結する実験では興味深い傾向がみられていると思うものの、順調には進められていないと認識している。また、初年度は網膜に関連して得られた研究成果が英文誌に掲載されたが、2021年度は一部の研究成果を英文誌に投稿したものの、掲載までには至らなかった。研究成果も乏しいため、2021年度は“やや遅れている”と自己評価した。現在の状況に合わせて規模を見直しつつ、可能な研究を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も電気生理学的記録と画像解析を中心に細胞・組織レベルでの研究を進める予定であるが、現状で得られている結果に合わせ、情報修飾物質をアミノ酸に限定せずに解釈することも検討したい。また 研究計画書の時点で計画した、D-アミノ酸を含む飼料を用いた蓄積試料作製は 現状では難しいため、パッチ電極内にD-アミノ酸を加えた状態でホールセルパッチして、記録細胞に一時的に蓄積させる実験方法で代用することを検討している。研究室改組後の中枢神経の研究を主とした研究機器や環境は非常に充実してきているため、これらのノウハウも活かしつつ研究を遂行したいと考えている。
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