2020 Fiscal Year Research-status Report
低酸素応答システム活性化薬剤を用いた下肢慢性創傷の新治療
Project/Area Number |
20K09841
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大澤 昌之 北海道大学, 大学病院, 講師 (70625029)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
舟山 恵美 北海道大学, 医学研究院, 准教授 (10533630)
山本 有平 北海道大学, 医学研究院, 教授 (70271674)
前田 拓 北海道大学, 医学研究院, 助教 (80813542)
石川 耕資 北海道大学, 大学病院, 助教 (60791374)
林 利彦 北海道大学, 歯学研究院, 准教授 (00432146) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | HIF-1α / 下肢慢性創傷 / マウス / 低酸素応答 / 創傷治癒 |
Outline of Annual Research Achievements |
創傷治癒過程において酸素環境は重要であり、その異常は創傷治癒の遷延をきたし慢性創傷の病態に深く関与する。生体は低酸素状態に対する適応応答としてHIF-1α (hypoxia inducible factor-1 alpha) を発現することで、血管新生や細胞増殖を促し、創傷治癒を促進するとされる。 本研究では、リンパ浮腫・虚血・糖尿病を念頭に置いたマウス下肢慢性創傷モデルを用いてHIF-1α調整薬剤の創傷治癒に与える影響を検証し、生体が本来もつ低酸素応答システムを利用した新たな慢性創傷に対する治療法の開発を目指す。 初年度の計画に従い、マウス下肢慢性創傷モデルの作成を開始した。まずはマウス後肢リンパ浮腫モデルにおける下肢創傷モデル作成に着手した。先行研究に準じてマウス後肢リンパ浮腫モデルを作成し、マウスの大腿外側部に皮膚全層の潰瘍を皮膚生検用デルマパンチを用いて作成した。マウス後肢リンパ浮腫モデルマウスの大腿に作成可能であり、かつ最大の面積の潰瘍を作成することを目的として予備実験を行い、潰瘍のサイズを決定した。さらにリンパ浮腫モデル作成から複数の時点において潰瘍を作成することで、最も潰瘍の上皮化が遅延する時点を検証した。 また、HIF-1α調整薬剤の投与量および期間について検討した。HIF-1α調整薬剤として、Roxadustat(HIF-1α活性化薬)およびYC-1(HIF-1α阻害薬)を使用し、それぞれの薬剤に関する既報論文の検討および予備実験を行い、本実験における薬剤の使用量及び投与間隔、使用期間について検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標として下肢慢性創傷モデルを作成し、HIF-1α調整薬剤の使用量及び投与タイミングの検討を行う必要があった。本年度は計画通りにマウス後肢リンパ浮腫モデルに対して下肢創傷モデルを作成し、創傷治癒遅延を認めた。また、Roxadustat(HIF-1α活性化薬)およびYC-1(HIF-1α阻害薬)を使用し、各薬剤の投与法を確立した。作成した動物モデルにおいて各薬剤を使用し、治癒期間を測定したところ、安定的な結果を得ることができている。以上のことから、初年度の達成度としてはおおむね順調に進展していると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
リンパ浮腫モデルにおける創傷治癒遅延の薬剤による治癒期間に及ぼす影響を解析する。今後、解析数を重ね、薬剤による創傷治癒の期間や創傷の収縮率等の差を検証し、統計学的に解析する予定である。 さらに潰瘍局所のHIF-1αほか、創傷治癒に関わる遺伝子発現、ならびにタンパク発現をはじめとした分子生物学的検討を進める。糖尿病および虚血における潰瘍モデルの作成も検討する方針である。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響で、当初購入を予定していた試薬等の納入が一時的に遅延し、次年度予算として計上する予定とした。
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