2020 Fiscal Year Research-status Report
Biofilm形成に関わる免疫と細菌間クロストークの解明、新規治療法の開発
Project/Area Number |
20K09842
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
下寺 佐栄子 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (10868227)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
館 正弘 東北大学, 医学系研究科, 教授 (50312004)
菅野 恵美 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (10431595)
丹野 寛大 東北大学, 医学系研究科, 助教 (10755664)
高木 尚之 東北大学, 医学系研究科, 助教 (30569471)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 難治性皮膚潰瘍 / Biofilm / 好中球 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題において申請者らは、褥瘡や糖尿病性下腿潰瘍などの難治性皮膚潰瘍におけるBiofilm形成への免疫と細菌間クロストークの関与について解明し、Biofilm誘導因子をターゲットとした新規治療法の確立を目指している。特に、好中球がBiofilmを誘導している可能性に注目している。創傷治癒において、好中球は最も早く創部に到達し、初期の感染防御や炎症反応に重要な役割を担う。その一方でBiofilmを伴う皮膚潰瘍では、好中球による組織障害が報告されており、好中球の暴走が慢性的感染症のトリガーではないかと指摘されている。 本年度、SDラットを用いて皮膚潰瘍緑膿菌Biofilm形成モデルを確立し、以下の点が明らかになった。①皮膚潰瘍への緑膿菌接種により、24時間をピークに好中球が集積数が高まり、その後低下を認めた。②好中球集積には、緑膿菌クオラムセンシング分子が関与することが示唆された。③緑膿菌を接種した非虚血創と比較し、緑膿菌を接種した虚血創では、好中球集積数の低下を認めた。④緑膿菌を接種した非虚血創と比較し、緑膿菌を接種した虚血創では、Biofilm形成が減弱する傾向を認めた。⑤クオラムセンシング分子合成に関わる遺伝子を欠損した緑膿菌では、Biofilm形成が減弱する傾向を認めた。 以上のことから、虚血を伴う慢性創傷におけるBiofilm形成には、好中球と緑膿菌クオラムセンシング分子のクロストークが関与する可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題において申請者らは、褥瘡や糖尿病性下腿潰瘍などの難治性皮膚潰瘍におけるBiofilm形成への免疫と細菌間クロストークの関与について解明し、Biofilm誘導因子をターゲットとした新規治療法の確立を目指している。 Biofilmを誘導する免疫系細胞として、好中球に注目して解析を行ったところ、好中球集積の乏しい創傷(虚血創)ではBiofilmが発達しない傾向を認め、免疫側の因子として、好中球由来因子がBiofilm誘導に関与している可能性が浮上し、概ね順調に進行していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
褥瘡や糖尿病性下腿潰瘍などの難治性皮膚潰瘍におけるBiofilm形成は、抗菌物質等の浸透を阻害し、皮膚潰瘍の治癒を阻害することが長年指摘されている。 これまでの主たる解析は、Biofilmを形成する細菌側にフォーカスされて進んできているが、我々は、Biofilmは細菌の生存戦略の一つであり、実は宿主側にBiofilm誘導因子が存在するのではないかと考えている。今回、Keyとなる細胞として好中球が浮上したため、好中球を起点として、好中球由来DNAやα-mannosidaseにフォーカスした解析を計画している。これらの解析を通して、宿主側の因子にアプローチしたBiofilm阻害薬の開発に着手したい。
|
Research Products
(4 results)