2020 Fiscal Year Research-status Report
Central and peripheral pathology associated with taste impairments in Parkinson's disease model mice
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20K09877
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
佐藤 元 明海大学, 歯学部, 講師 (10432452)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野崎 一徳 大阪大学, 歯学部附属病院, 准教授 (40379110)
三浦 治郎 大阪大学, 歯学部附属病院, 助教 (70437383)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 味覚障害 / パーキンソン病 / 農薬 / 島皮質 / 孤束核 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、パーキンソン病に関連した味覚障害の発症機構を、 PDモデルマウスを用いてin vivo および in vitro 両観点から明らかにすることを目的とする。今年度は、まずロテノン鼻腔内投与マウスの味覚嫌悪学習能について行動学的に評価した。その結果、サッカリン(甘味)あるいは低濃度のキニーネ(苦味)溶液をマウスに飲水させ、飲水直後に塩化リチウムを腹腔内投与すると、ロテノン鼻腔内投与マウスは、それらの味に対する嫌悪を正常マウスと同程度に獲得したが、その嫌悪記憶の保持能が正常マウスに比べて低下することを明らかにした。これまでの先行研究から、島皮質におけるシナプス伝達の可塑的な変化が味覚嫌悪記憶の保持能に関与することが知られている。そこで、マウス脳薄切標本の島皮質味覚野錐体細胞からパッチクランプを行い、ロテノン鼻腔内投与マウスの島皮質味覚野に可塑的変化が生じているか否かについて検討した。その結果、島皮質味覚野に高頻度連続電気刺激を与え、味覚野第5層錐体細胞における興奮性あるいは抑制性シナプス伝達効率の変化を調べると、ロテノン鼻腔内投与マウスの長期増強 (LTP)は正常であるが、その長期抑圧 (LTD)が障害を受けることを明らかにした。さらに、このマウスの自発性抑制性シナプス電流と持続性GABA電流がともに減少することを明らかにした。以上の結果から、ロテノン鼻腔内投与マウスの島皮質味覚野第5層錐体細胞におけるGABA作動性シナプス伝達の減少がLTDの障害を引き起こし、その結果、味覚嫌悪記憶の保持能が低下した可能性が示唆された。今年度の研究成果は、PDの味覚障害の発症機構を解明する一助となり、その医学的および臨床的意義はきわめて高いと考える。これらの研究成果は本年度に学術論文として報告した(Toyoda et al., 2021)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、味覚情報処理に関与する島皮質味覚野或いは孤束核の機能的な変化がロテノン鼻腔内投与マウスで観察されるか否かを、in vitro パッチクランプ法あるいはin vivo 細胞外記録法を用いて調べる予定であった。本年度の研究成果から、ロテノン鼻腔内投与マウスの島皮質味覚野第5層錐体細胞におけるシナプス伝達特性が機能的に変化することを明らかにすることができ、パーキンソン病に関連した味覚障害発症に関与する中枢性障害の一部を明らかにできた。一方、本研究の先行実験で器質的変化が観察されている孤束核における機能的な変化の有無を検討する研究についても、今年度末からin vivo 実験に着手しており、予定していた研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度明らかになったロテノン鼻腔内投与マウスにおける自発的抑制性シナプス伝達の変化が、ドパミン、GABAA受容体、NMDA受容体、AMPA受容体の作動/拮抗薬の灌流投与により変調されるか否かを検討し、味覚関連記憶障害の発症に関わる中枢神経機構の詳細を明らかにする予定である。また、ロテノン鼻腔内投与マウスの脳薄切標本に膜電位感受性色素を負荷し、島皮質第IV層通電およびGABAA受容体拮抗薬の灌流投与によって生じる興奮伝播の時空間パターンを可視化する予定である。さらに、孤束核に存在する神経細胞あるいはグリア細胞の電気的活動を細胞外記録法とカルシウムイメージング法を用いて可視化し、ロテノン投与マウスの孤束核に機能的な変化が認められるか否かを明らかにする予定である。今年度と同様に、ロテノン鼻腔内投与マウスの機能的な変化を電気生理学的に観察した後、組織学的あるいは生化学的な手法を用いて器質的な変化の有無について調べる研究も継続していく予定である。
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Causes of Carryover |
2021年2月1日に大阪大学から明海大学へ異動し、大阪大学から明海大学への科学研究費および研究環境の移設に時間を要したため、当該助成金が生じた。当該助成金は電気生理学実験で使用する消耗品購入費として次年度の助成金と併せて適切に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)