2020 Fiscal Year Research-status Report
味蕾基底細胞の再定義:「細胞型分化の解明」と「味蕾オルガノイド評価系の確立」
Project/Area Number |
20K09892
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
三浦 裕仁 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 准教授 (80353936)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小柳 江梨子 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (20791700)
原田 秀逸 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (60128452)
山中 淳之 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 准教授 (80343367)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 味蕾 |
Outline of Annual Research Achievements |
味蕾のI、II、III型細胞は味受容機能が異なり、五基本味のうち甘味・うま味・苦味はII型細胞、酸味はIII型細胞が受容する。塩味は濃度によって受容細胞が異なり、低濃度の塩味はI型細胞の一部、高濃度の塩味はII型とIII型細胞の一部が受容するとされている。各味蕾内の細胞型の構成比は、I型が全細胞の約半数程度と最も多く、次いでII型が多く、III型細胞は最も少ないとされる。この比率には味蕾が存在する口腔内の部位ごとに差があり、III型細胞の割合は有郭乳頭で最も高く、軟口蓋、茸状乳頭の順に少ないとされている。味蕾幹細胞を培養して形成されるオルガノイド内には、幹細胞を採取する口腔内部位に対応した割合で各細胞型が分化するという報告がある。しかし、実際は、生体における個々の味蕾の細胞構成は充分には検討されていない。また細胞型の分類に使用される分子マーカーにも、検討が不十分な分子がある。 本研究では、味蕾の形態を維持したままホールマウント免疫染色を行い、個々の味蕾の II型とIII型の細胞構成を詳細に解析した。その結果、1) 抗3型イノシトール三リン酸受容体 (IP3R3) 抗体で検出されるII型細胞と抗4型炭酸脱水酵素 (CA4)抗体で検出されるIII型細胞は、完全に独立しており、これらの分子の細胞型マーカーとしての信頼性が確認された。2) 一方、これらの分子マーカーで検出されるII型とIII型細胞の数は、味蕾間で大きくばらついており、特に茸状乳頭と軟口蓋の味蕾では従来提唱されてきた相関関係は検出されなかった。さらに、III型細胞マーカーとされているNCAMを加えて解析したところ、CA4を発現する細胞はすべてNCAMを発現すること、また、軟口蓋と茸状乳頭の味蕾では、CA4を発現しないNCAM発現細胞の中にII型細胞マーカーであるIP3R3を発現する細胞が存在することが、明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
味蕾の細胞構成が味蕾間で大きくばらついており、個々の味蕾を観察すると従来提唱されてきた、細胞型の構成比は成立しないことが明らかになった。これは味蕾細胞を生み出す味蕾幹細胞の性質を反映している。また、味蕾細胞が次々とターンオーバーする過程で、その大きさと細胞構成が、従来考えられてきたよりもダイナミックに変化している可能性を示している。このように、本研究によって、味蕾幹細胞の性質について解明を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、さらに、味蕾基底細胞段階でどの程度まで細胞型分化が進行しているか解析を進め、味蕾細胞から味受容細胞が生み出されるメカニズムの解明を進める。
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Causes of Carryover |
動物飼育費を別予算から賄うことが出来たので、その分、差額が生じた。 次年度の組織解析試薬の購入費に充てる予定である。
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