2020 Fiscal Year Research-status Report
口腔細菌叢バランス失調が口内炎に及ぼす影響とその原因因子の解明
Project/Area Number |
20K09894
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
人見 涼露 日本大学, 歯学部, 助教 (70548924)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 堅太郎 九州歯科大学, 歯学部, 教授 (40316154)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 潰瘍性口内炎 / 口腔細菌叢 |
Outline of Annual Research Achievements |
放射線化学療法を受ける頭頸部がん患者に発症する潰瘍性口内炎は激痛を生じるため、会話や食事などの口腔機能を困難にする。また、唾液腺萎縮による口腔乾燥も併発するため、臨床上大きな問題となっている。以前、動物実験にて唾液分泌低下による潰瘍性口内炎の増悪や治癒の延長には、口腔乾燥による口腔細菌数増加が強く関与する可能性を報告した。しかし、それだけではなくドライマウスや歯周病患者などに認められる口腔細菌叢のバランス失調が影響していた可能性が考えられる。本研究では、口腔乾燥によって口腔細菌叢がどのように変化するのか、その変化は潰瘍性口内炎の治癒過程や疼痛にどの程度影響するのかを明らかにすることを目的としている。令和2年度は、所属機関が変わり新しい研究室でのスタートとなったため、始めにこれまでの研究結果の再現性を確認した。その結果、酢酸処置によって形成する潰瘍性口内炎の程度やその治癒機関に大きな違いは認められなかった。一方、疼痛評価の指標としている自発グルーミング(前肢で口元をぬぐうラビング行動)に関しては安定した結果が出にくいものの、その行動値は過去と同程度だった。また、接触痛の指標となる機械逃避閾値に関しては、若干高い傾向がみられた。これらのデータを基に、令和3年度は、唾液腺摘出による口腔乾燥モデルを作製し、口腔粘膜から得た口腔細菌の16S リボソーム(r) RNA 系統解析および口内炎モデル動物を用いた行動学的・分子生物学的および免疫組織学的手法を用いた検討を行っていく。口腔乾燥による口内炎増悪メカニズムが解明されれば、適切な治療法や予防法を見出すことにつながるため、潰瘍性口内炎で苦しむ患者のQOL 向上に貢献できると考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度は所属機関が九州歯科大学から日本大学歯学部に変更になったため、研究環境を整備や必要器材の設置などが必要だった。さらに、これまで得られてきた基本データの再現性確認を確認するため、潰瘍性口内炎モデルにおける口内炎程度や治癒の経日的変化、覚醒下における自発痛、接触痛の経日的変化について検討した。予定していた口腔細菌叢の解析に関する各種消耗品の準備はほぼ終了したため、令和3年度は、口腔細菌叢の解析を外注にて行い、研究を進めていく予定である。これらのことから、実験の進捗はやや遅れている、と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、唾液腺を摘出した口腔乾燥モデルラットを用いて、唾液腺摘出前と摘出後に関して経日的に下顎口腔前庭の口腔細菌を採取し、16S rRNA遺伝子を解析して口腔細菌叢の変化を明らかにする。そして、唾液腺摘出後、最も変化が大きかった細菌種とそのタイムコースを明らかにする。次に、最も細菌叢が変化したタイムコースにおいて酢酸を用いて口内炎を作製した時の口内炎の程度や治癒過程および疼痛について評価する。この実験により、口腔乾燥により増悪する口内炎に対する口腔細菌叢の変化の関与が明らかになると考えられる。その後は、口内炎増悪に関与する細菌種に特異的に効果を発揮する抗菌薬の検索し、増悪口内炎に対する効果を検討する予定である。 本研究の目的は、口腔乾燥に伴う増悪口内炎に関与する口腔細菌種を同定し、口内炎の改善や疼痛の予防に口腔細菌叢バランスの回復が有効であるかどうかを明らかにすることである。口腔乾燥を伴う口内炎の増悪機構と口腔細菌叢の役割が明らかにできれば、口内炎の予防や治療薬の選択に役立ち、患者のQOLの向上にも貢献できると考えている。
|
Causes of Carryover |
令和2年度は新型コロナの蔓延により、学会に参加しなかったため、旅費を使用しなかった。また、口腔細菌叢の解析も行えなかったため、外部委託費が未使用で、解析用パソコンのも購入しなかった。よって、次年度使用額が生じた。 本年度も引き続き学会参加は困難である可能性が高いが研究は行える状況のため、前年度実行できなかった口腔細菌叢の解析を行うなど、未使用金を使用する予定である。
|