2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of oncolytic virus targeting tumor angiogenesis factor
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20K09900
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松田 彩 北海道大学, 歯学研究院, 特任助教 (60514312)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊地 奈湖 (間石奈湖) 北海道大学, 歯学研究院, 助教 (00632423)
樋田 京子 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (40399952)
東野 史裕 北海道大学, 歯学研究院, 准教授 (50301891)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 腫瘍溶解ウイルス / 腫瘍血管 / 口腔がん / ARE-mRNA / HuR |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は腫瘍血管内皮が特異的に分泌するマーカーの存在下において申請者らの開発したARE-mRNAの核外輸送・安定化を利用した腫瘍溶解ウイルスの効果の増強がみられるか検討することである。 腫瘍血管内皮マーカーとして申請者らが着目しているBiglycanは腫瘍間質でToll-like receptor 2、Toll-like receptor 4を介してARE-mRNAから翻訳されるNF-κBを活性化させ、サイトカインの発現を増加させることが知られている。申請者らは子宮頸がん細胞や口腔癌細胞を用いてIL-1β、TNF-αの刺激によりHuRが核外輸送されることを示した。また、これらのサイトカインの刺激でわれわれが開発した腫瘍溶解ウイルスの効果が増強することをXTT assayにより示した。このことから腫瘍血管が分泌するBiglycanにより腫瘍溶解ウイルスの効果が増強することが示唆された。 申請者らはBiglycan に加え新たに候補分子として腫瘍血管内皮細胞で発現が高いことが示されているARE-mRNA Xについて検討した。ヒト口腔癌検体、ヒトメラノーマ検体からわれわれが樹立したマウスの正常血管内皮細胞と腫瘍血管内皮細胞を用いて、ARE-mRNA Xはマウス腫瘍血管内皮細胞で発現が高いことを示した。細胞免疫染色、Western blottingにより腫瘍血管内皮細胞でHuRが核外輸送されていることを示した。またヒト腎癌組織を用いて腫瘍血管内皮細胞の細胞質にHuRの発現がみられることを組織免疫染色により示した。さらに腫瘍血管内皮におけるARE-mRNA Xの半減期について検討し、ARE-mRNA Xが腫瘍血管内皮細胞で安定化していることを示した。以上よりARE-mRNA Xが腫瘍溶解ウイルスの効果を増強させることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は腫瘍血管内皮が特異的に分泌するマーカーの存在下において申請者らの開発した腫瘍溶解ウイルスの効果の増強がみられるか検討することである。 申請者らは本研究により腫瘍血管内皮マーカーとして申請者らが着目しているBiglycanにより申請者らが開発した腫瘍溶解ウイルスの効果が増強されることを示した。 申請者らはアデノウイルス(Ad)の初期遺伝子E4領域のタンパクが持つARE-mRNAを核外輸送・安定化する機能が、Adの複製にも必須であることを見出し、E4領域を欠失した腫瘍溶解ウイルス(AdΔE4)を開発した。またAdΔE4はARE-mRNAがRNA結合たんぱくHuRと結合し、核外輸送・安定化されているがん細胞では効率よく増殖・細胞破壊し、ほとんど輸送されていない正常細胞では増殖できないことを報告した。本研究ではARE-mRNA Xが腫瘍血管に特異的に発現し、腫瘍血管で核外輸送・安定化していることを示した。このことからARE-mRNA X がBiglycanに加え、新たに腫瘍血管マーカーとなりうる分子であること、ARE-mRNA Xが腫瘍溶解ウイルスの効果を増強させることが示唆された。 以上より本研究はおおむね計画通り進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はARE-mRNA Xが腫瘍溶解ウイルスの効果を増強することをin vitroで示し、Biglycan、ARE-mRNA Xが担癌マウスモデルあるいはヒトサンプルにおいても同様に腫瘍溶解ウイルスの効果を増強するか検討する。 まずヌードマウスの皮下にヒトがん細胞を移植し、形成した腫瘍に腫瘍溶解ウイルスを直接腫瘍内投与し、時間経過とともに変化する腫瘍の大きさをグラフにし、コントロール(ウイルスがいない溶液を投与した群)と比較して、腫瘍溶解効果を検討する。マウスから腫瘍をサンプリングし、組織免疫染色により、腫瘍血管内皮マーカーの発現、がん細胞におけるHuRの局在の変化を検討し、腫瘍血管内皮マーカーが腫瘍溶解ウイルスの腫瘍溶解効果を増強させるメカニズムを解明する。 また癌患者の血清を用いて、目的の腫瘍血管内皮マーカーを検出する。またヒトの癌組織における発現を組織免疫染色により解析し、これまで見出してきた知見がマウスだけではなく、ヒトにもあてはまることを確認する。
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Causes of Carryover |
今年度は参加した学会が全てオンライン開催であり、旅費を使用しなかったこと、物品の納品が遅れたため年度内に購入できない物品があったことから、次年度使用額が生じた。 次年度は今年度購入できなかった物品を購入する予定である。
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Research Products
(11 results)