2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
20K09909
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
大西 智和 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 准教授 (30244247)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 糖尿病 / IgA腎症 / 歯周病菌 / 扁桃 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は2型糖尿病マウスに歯周病菌を感染させ実験的歯周炎を誘導しIgA腎症を発症させることで、糖尿病における歯周病菌が誘導する腎障害の発症メカニズムを解明することを目的とする。本年度はTpl2/Cotの遺伝子をノックアウトしたC57BL/6マウスを用いることで、歯周病菌からの刺激にどのようなシグナル経路が関与しているか検討した。 Tpl2/Cotノックアウトマウス及びコントロールとして野生型C57BL/6マウスに高脂肪餌または通常の餌を4ヶ月間与えた。そして、歯周病菌でありIgA腎症の扁桃から有意に見いだすことが出来るTreponema Sp.またPseudomonas gingivalisを用いてワイヤー結紮法にて実験的歯周病を誘導した。 その結果、IgA腎症の特徴として知られる、傍メサンギウム領域に PAS 染色陽性が認められ、腎糸球体のメサンギウム領域染色にIgA沈着が免疫組織化学的手法で確認された。そして、野生型マウスをTpl2/CotノックアウトマウスにおいてPAS 染色やIgAの沈着が弱まった。しかし、高脂肪餌を与えたCosmc遺伝子の発現下降はTpl2/Cotの遺伝子をノックアウトしたC57BL/6マウスにおいても変化がなかった。尿タンパクは血清アルブミンを検出することで検出した。野生型マウスにおいて高脂肪餌を与えることが尿タンパクの増加に繋がり、明らかな増加がTreponema Spを用いた実験的歯周炎誘導マウスにおいて認められた。Tpl2/Cotノックアウトマウスにおいて高脂肪食でTreponema Spを用いて実験的歯周炎を誘導するとタンパク尿の低下は認められるものの、野生型の正常マウスにまでは戻ることはなかった。 以上の結果から、糖尿病マウスを用いた実験的歯周炎によるIgA腎症の誘導は、部分的にTpl2/Cotを経由するシグナル経路が存在することが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
T. sp、または P. gingivalisはグラム陰性の歯周病菌であるのでB細胞およびその活性化に関わるTh2細胞への菌体成分のLPS刺激や細菌性DNAがIgA産生刺激には重要であることが考えられる。よって、本年度はそれらの受容体TLRsの下流シグナルであるTpl2/Cotのノックアウトマウスを用い高脂肪食にて2か月飼育することで2型糖尿病マウスを作製を試み、グラム陰性の歯周病菌を用い実験的歯周炎を誘導した。しかし、血糖値を測定しても2ヶ月では明らかな上昇が認められなかったので、再度実験を行い4ヶ月の飼育にて有意な体重増加と血糖値の増加を認められるに至った。そして、上記の実験を行うことで、TLRsシグナルの必要性を検討した。予想通り、Tpl2/Cotノックアウトマウスにおいて高脂肪食でTreponema Spを用いて実験的歯周炎を誘導するとPAS 染色やIgAの沈着が弱まった。しかし、血清中のIgAの濃度変化は認められず、歯周病菌により鼻腔粘膜で作られたIgAの増加という一つの仮説は否定され、糖鎖の修飾の違いが糸球体のメサンギウム領域への沈着を増すという一般に流布されている仮説を指示する結果となった。よって、今後は鼻粘膜でのIgA産生について、鼻粘膜のリンパ組織を用いて検討を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
Tマウスの鼻腔粘膜におけるリンパにおける主要器官は扁桃ではなくNasal- or nasopharynx- associated lymphoid tissue (NALT) でありこのNALTがIgAの分泌器官として働いている。昨年度の予備実験において、このNALTをマウスから切除し器官培養することに成功した。この手法を用い、高脂肪餌にて飼育したマウスや実験的歯周炎誘導マウスをから、NALTを採取し器官培養を行い培養液中に分泌したIgAの量や多の分子との会合状態を探ることを行う。 また、左心室からを還 流した後腎臓をコラゲナーゼ処理し、マグネットビーズにより糸球体を集めメサンギウム細胞の培養を行う。アウトグロースしてきたメサンギウム細胞に採取した血清 IgA により刺激し細胞増殖や炎症 性サイトカイン類 mRNA の発現を real time RT-PCR 法にて検出する。 メサンギウム細胞の線維化も糸球体の機能低下につながるので、細胞外マトリックス成分としてI型コラーゲンやラミニンの発現を検討し、Tpl2/Cotの役割についても検討する。
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