2022 Fiscal Year Annual Research Report
免疫・骨代謝の賦活化による治癒促進を狙った新しい根管治療パラダイムの構築
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20K09952
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊藤 祥作 大阪大学, 大学院歯学研究科, 准教授 (90360495)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 真土 大阪大学, 大学院歯学研究科, 講師 (40448105)
成瀬 陽菜 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (60823515) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 根管貼薬剤 / 炭酸リチウム / Wntシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は,炭酸リチウムの治癒促進のメカニズムについて解析を行った。まず最初に,根管貼薬後 24 時間の試料における,Axin2 陽性細胞の検索を行ったところ,炭酸リチウム群ではコントロール群と比較して根尖病変内に多く認められた。Axin2 はWnt/β-catenin シグナル伝達経路のターゲット遺伝子であり,その発現はシグナル伝達経路の活性化を示唆している。また,根管貼薬後 1,2,3 週の試料において, M1 マクロファージのマーカー分子である CD86 陽性細胞が,コントロール群では根尖病変内に多く認められたが,炭酸リチウム群ではほとんど認められなかった。根管貼薬後 4 週の試料においては,いずれの群でも病変内に CD86 陽性細胞は認められなかった。一方で,根管貼薬後 1 週から 4 週にかけて,CD68,CD206 がダブルポジティブである M2 マクロファージが,炭酸リチウム群では根尖病変内により多く認められた。したがって,炭酸リチウム群では,観察期間を通して抗炎症状態への移行と,組織の治癒が生じていたと考えられる。 また,根管貼薬後 1,2,3 週の試料において,制御性 T 細胞のマスター転写因子でありマーカー分子である Foxp3 陽性細胞が,炭酸リチウム群では根尖病変内に認められた。 以上のことから,炭酸リチウムの根管貼薬による根尖病変治癒促進のメカニズムは,まず,Wnt/β-catenin シグナル伝達経路が活性化することがきっかけとなる。これに引き続き,M1 マクロファージの分化抑制,M2 マクロファージの分化促進,制御性 T 細胞の分化誘導が起こり,免疫系の制御が行われる。これらの機序が働くことで,根尖病変内の炎症状態が早期に収束し,抗炎症状態へ移行,治癒に適した環境が整えられたと考えられる。そして,骨芽細胞の分化が誘導されることにより,硬組織の形成が引き起こされ根尖病変体積の縮小が促進されたと考えられる。
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Research Products
(1 results)