2021 Fiscal Year Research-status Report
バリウムガラスに対するリン酸モノマーとシランカップリング剤の分子挙動解明
Project/Area Number |
20K09955
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
長岡 紀幸 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (70304326)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉原 久美子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (90631581)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | バリウムガラス / ジルコニア / シランカップリング剤 / リン酸モノマー / 化学結合状態解 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,リン酸吸着能を有するバリウムガラスやジルコニアに対するリン酸モノマーとシランカップリング剤の結合状態を解析する。バリウムガラスと同様にリン酸吸着能を有するジルコニアに対して,カップリング処理前の正リン酸処理(歯科では唾液汚染等の清浄化に使用される)がシランカップリング処理に与える影響,シランカップリング処理液に添加される酸性剤としてのリン酸モノマー(10-メタクリロイルオキシデシルリン酸二水素;10MDP)の影響を評価する。シランカップリング剤は,スペーサの異なる3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(3MPTS)および8-メタクリルオキシオクチルトリメトキシシラン(8MOTS)を用いた。8MOTSは加水分解によるシラノール基の出現が,3MPTSよりも時間を要する可能性が示唆された。これに関して,フーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)の高速スキャン法により評価を試みたが,加水分解に関する情報は得られなかった。市販の歯科用カップリング剤を含めて,カップリングに重要な脱水縮合の評価を核磁気共鳴法(NMR)により実施した。一部の市販品はデータ解析できない状況であったが,試作品と,ほとんどの市販品はデータ解析の結果,接着試験と良い相関が得られた。接着強度が高く,耐久性の良い接着が可能なカップリング処理剤は,カップリング処理剤の添加剤である酸性剤により十分に脱水縮合していた。さらに,カップリング処理剤に水分が含まれる場合,短時間のうちに処理剤中で,シランカップリング剤同士が縮合しオリゴマー化することで,カップリング活性を失った。X線光電子分光法(XPS)による測定は外部機関での実施を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
X線光電子分光法(XPS)は,非導電性試料の精密な測定が必須であることから外部機関での実施を予定している。測定サンプルは最表面の状態を良好に保つ必要があることから,測定機関に持参する予定であるが,COVID-19の影響により出張できない状況が続いた。最終年度である今年度中に実施予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
ジルコニアやバリウムガラスを用いたコンポジットレジンブロックによる,接着強度試験を進めると共に,化学結合状態解析を実施する。X線光電子分光法(XPS)により,材料表面上のカップリング剤の結合状態を評価する。必要に応じて個体NMR法による結合状態評価を実施する。シランカップリング剤を効率よく脱水縮合できる,リン酸モノマー以外の酸性剤を探索する。現在,酸性剤として酢酸が使用されているが,酢酸よりも脱水縮合を効率的に進行できる酸性剤を探索する。以上の結果から本研究の目的である,カップリングメカニズムと結合状態の解析を進め,リン酸吸着能を有する歯科材料へのカップリング手法の確立を目指す。
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Causes of Carryover |
XPS測定は他機関で有償により測定する予定であった。また,学会に参加して情報収集する予定であったが,COVID-19の影響で,出張が延期,学会がオンライン開催になったために,委託経費,旅費を次年度に繰り越した。
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Research Products
(3 results)