2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of a new bone regeneration method targeting bone tissue macrophage (OsteoMacs)
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20K09967
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
阿南 壽 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 教授 (80158732)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松崎 英津子 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 准教授 (20432924)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | PSリポソーム / 生体活性ガラス / GBR / 骨組織マクロファージ / 多核巨細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、ホスファチジルセリンを含有するPSリポソーム(以下PSLと略す)はミクログリア/マクロファージに貪食された後、プロスタグランジンE2(以下PGE2と略す)の産生を促すことが報告されている。PGE2は強力な抗炎症作用を有していることから、PSLはマクロファージの浸潤した炎症部位において治癒促進作用が期待される。一方、生体活性ガラス(bioactive glass以下BAGと略す)は骨伝導能を有しており、臨床において、骨補填材としての有用性が示唆されている。しかしながら、GBR(骨誘導再生法)における骨組織マクロファージ(OsteoMacs)と骨芽細胞系細胞の細胞連鎖に関する報告はほとんど認められない。そこで本研究では、ラット頭蓋骨骨欠損モデルを用いて、BAGとPSLを骨欠損部に応用することにより、OsteoMacsと骨形成との関連性について解析した。その結果、処置後2週目のBAG + PSL添加群では、BAG粒子の周囲に、ED1陽性を示す単核および多核の巨細胞が多く観察されるとともに、一部BAG粒子に接してED1陽性の多核の巨細胞が観察された。また、BAG粒子の近傍には幼若な骨芽細胞を含有した新生骨の形成像が観察された。一方、BAG単独群では、ED1陽性を示す単核および多核の巨細胞が観察されたが、その局在部位は異なり、BAG粒子から少し離れた位置に散在性に観察された。処置後4週目に、BAG + PSL添加群ではBAG単独群に比較して、窩洞内におけるエックス線不透過性の硬組織の面積が有意に高い値を示した。以上のことより、BAG + PSL添加群ではBAG単独群と比較して、早期に骨組織形成が促進され、その作用には、BAG粒子近傍で観察されたED1陽性の多核巨細胞が関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BAG + PSL 添加群では処置後4 週目から骨欠損部にBAG を中心にして不透過性の亢進した像が多数認められた。さらに、処置後8 週目においても活発な硬組織形成像が継続して観察された。また、マイクロCT の定量的解析においても、処置後4 週目に、BAG + PSL 添加群ではBAG単独群に比較して、窩洞内における不透過像の面積が有意に高い値を示した。 一方、組織学的解析においてはBAG とPSL 併用群の処置後2 週目よりBAG 粒子の周囲に単核の紡錘形、類円形、多核形などの多様な形状を示すマクロファージ様細胞が多数観察された。また、BAG 粒子に接してED1陽性を示す多核の破骨細胞様細胞が観察された。また、BAG 粒子の近傍には幼若な骨細胞を含有した新生骨の形成像が観察された。8 週目においてはBAG とPSL 併用群とBAG 単独群の両群において、BAG 粒子を含有した成熟した新生骨形成像が観察された。BAG とPSL 併用群では、炎症性細胞浸潤は著しく減少し、欠損部を一様に厚い線維性骨で被覆しているのが観察された。BAG 単独群においてもBAG とPSL 併用群と同様に厚い骨組織が観察されたが、一部、島状の形態を示していたことより、BAG とPSL 併用群に比較して、やや骨組織の修復過程が遅れているように思われた。また、一部、ED1陽性を示すマクロファージ系細胞の収束像が観察された。以上のことより、ラット頭蓋冠骨欠損部の実験系において、ホスファチジルセリンを含有するPSリポソームとBAGの併用療法の骨形成が促進されたことに対して、ED1陽性のマクロファージと多核巨細胞の関与が推測されたたため、研究はほぼ順調に推移していると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、さらにPSリポソームの抗炎症効果および骨形成促進効果に着目し、生体活性ガラスと骨組織マクロファージ(OsteoMacs)とのカップリングに及ぼす効果について解析する。また、PSLが炎症における創傷治癒と骨形成に及ぼす影響について、硬組織再構築に重要と考えられるマクロファージのM2タイプへの変換機構について解析を行う。
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Causes of Carryover |
近年、骨組織に存在するマクロファージの特別なサブタイプである骨組織マクロファージ(OsteoMacs)に関する基礎的研究から、骨形成とリモデリングにおけるOsteoMacsの重要な役割が指摘されている。そのため本研究を行うことにより、生体活性ガラス界面の多核巨細胞および骨組織マクロファージの解析を行うことが可能となった。次年度はマクロファージM2 タイプへの変換機構の探索および多核巨細胞形成の解析を分子生物学的及び免疫組織学的に解析するため、各種の抗体及び試薬が必要なため次年度に使用額が生じることになった。
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