2020 Fiscal Year Research-status Report
S1Pによる歯乳頭由来幹細胞の象牙芽細胞分化誘導と歯髄血管再生療法への応用
Project/Area Number |
20K09969
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Research Institution | Fukuoka Dental College |
Principal Investigator |
松崎 英津子 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 准教授 (20432924)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 富美 産業医科大学, 医学部, 教授 (50274436)
阿南 壽 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 教授 (80158732)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 歯髄血管再生療法 / 歯乳頭由来幹細胞 / S1Pシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、歯髄血管再生療法における象牙芽細胞や歯髄様組織への分化誘導を促す手段として、S1Pシグナルによる歯乳頭由来幹細胞SCAPの賦活化に関する解析を行う。これまでに、ラット正常歯髄組織および歯根周囲にはS1PR1陽性細胞が多く、特に歯髄と象牙質の境界面すなわち象牙芽細胞の存在部位にS1P受容体のうちS1PR1が多く発現していることを観察した。 まず、マウス歯乳頭尖端前駆細胞 (iSCAP)を使用して、S1Pが細胞増殖に及ぼす影響を検討した。S1Pは、iSCAPの細胞増殖には有意な影響を及ぼさず、コントロール群と同程度かやや少ない細胞増殖作用を示した。また、iSCAPはBMP-9の遺伝子導入で象牙芽細胞へ分化誘導される報告があるため、リコンビナントBMP-9を添加し、象牙芽細胞誘導が可能かどうかについて、石灰化を指標として検討した。50%薬効量のBMP-9濃度で石灰化染色を実施、コントロールと比較してわずかに石灰化が亢進した。 一方、根管内に侵入した歯根膜幹細胞(PLSC)の骨芽細胞分化が異所性硬組織形成の一因である可能性から、SCAPとPLSCとを区別して考慮する必要がある。そこで、歯髄幹細胞の象牙芽細胞分化に関与する報告がある血管内皮増殖因子(VEGF)に着目した。骨芽細胞分化誘導を行ったヒト歯根膜幹細胞 (HPLSC)スフェロイドにおいて、S1Pにより放出されるVEGFの分泌増加を観察した。一方、この上清をヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)培養液に加え、血管新生に及ぼす影響を検討したところ、コントロールと比較して管腔形成の増加を認めたが、上清非添加のコントロールとは差が認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マウス歯乳頭尖端前駆細胞 (iSCAP)の購入に際し、培養ディッシュ、血清、専用培地、コーティング材の海外からの購入およびmaterial transfer agreement書類のやりとりに時間を要した。また、BMP-9の遺伝子導入ではなく、リコンビナント製品の添加による細胞分化誘導を検討しているが、その至適濃度の検討に手間取っている。 そのため、補完する実験として、PLSCスフェロイドのVEGF産生と血管新生作用に関する実験を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
in vitroの実験系においては、50%薬効量のBMP-9濃度で石灰化染色を実施したが、コントロールと比較してわずかな石灰化亢進効果であったため、BMP-9の至適濃度、培養期間の再検討と、S1Pの添加時期について考慮する。困難である場合には、bFGF-2による誘導を試みる。 計画以外に追加で実施したVEGF産生と血管新生作用については、PLSCとの比較が必要であるため、iSCAPでの同作用について検討を加える。 また、in vivoでの実験系についても実施を行う。
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Causes of Carryover |
実験がやや遅れているため試薬、ELISAキット等使用期限のある製品の購入が遅れている。また、COVID-19の影響で学会現地開催がすべて中止となり、出張を見送ったため、当該助成金が生じた。 次年度の物品費、学会出張で使用予定としている。
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