2021 Fiscal Year Research-status Report
BDNFによる歯髄細胞とマクロファージの細胞連携を基盤とした歯髄保存療法の開発
Project/Area Number |
20K09976
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
武田 克浩 広島大学, 病院(歯), 講師 (10452591)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 能由来神経栄養因子 / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
超高齢化社会を迎えるにあたり、健康寿命の延伸のために口腔機能(咀嚼、嚥下機能等)の低下防止、歯の喪失防止・咬合の保持により一層取り組む必要がある。歯髄の保存は、歯の破折や抜髄に伴う医原性因子の介入や継発症の発生を避けることにつながり、歯の機能を長期に維持する上で非常に重要である。う蝕や外傷によって歯髄が象牙質の保護を失うと、歯髄は不可逆的な歯髄炎に陥り、最終的に壊死に至る。本研究は、歯髄における炎症制御と修復象牙質形成の誘導を両立する分子として脳由来神経栄養因子(BDNF)に着目し、BDNFを用いた細胞機能制御による歯髄象牙質複合体の再生に基づく新規歯髄覆髄材の開発を目的とし た。「BDNFが炎症を制御するとともに、歯髄細胞-マクロファージの細胞連携を制御し修復象牙質形成を促進するか?」という学術的な「問い」を設定し、この課題に取り組む。本年度は、BDNFのマクロファージ貪食能に及ぼす影響を検討するために、マウスマクロファージ様細胞株RAW264.7を用いて実験を行った。細胞をBDNF(50 ng/mL)で12時間刺激し、培養終了30分前にFITC標識ラテックスビーズを培地中に加えて貪食させ、蛍光強度を測定した。BDNF添加の30分前にK252a(TrkB阻害剤)もしくはRac1阻害剤を加えてその影響も評価した。BDNFがGTP結合型Rac1発現およびRac1のリン酸化に及ぼす影響をプルダウンアッセイとウェスタンブロッティングによって解析した。BDNFはRAW264.7の貪食能を無刺激時と比較し約2.5倍上昇させた。その効果はK252aおよびRac1阻害剤によって抑制された。活性型であるGTP結合型Rac1およびリン酸化Rac1はBDNF刺激15分をピークに発現が促進された。以上のことから、BDNFはRac1活性化を介して、マクロファージの貪食を亢進することが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度に計画しているビーグル犬歯髄炎モデルを用いたBDNFの抗炎症作用と修復象牙質形成能の検討に関しても、モデル作製を開始しており、おおむね順調に進展していると考えている。しかし、in vitroにおけるマクロファージと歯髄細胞の共培養に関してはデータがばらついており、培養条件の検討が必要である。
|
Strategy for Future Research Activity |
ビーグル犬を用いた実験は現在処置歯は脱灰中で、脱灰終了後、すみやかに組織を包埋し組織標本の作製にとりかかる。In vitroにおいては、マクロファージが歯髄細胞の象牙芽細胞分化に及ぼす影響とBDNFの関与を調べるために、BDNFおよびLPS処置を行ったマクロファージ様細胞の培養上清を、ヒト歯髄細胞 (Lonzaから購入) に作用し、RNA sequencingを実施することで各群の特徴的な遺伝子を決定していく予定である。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大で試薬発注後の納品が遅れる可能性があるとの代理店からの情報があり、年度末の注文を次年度に延期したため次年度使用額が生じた。2022年度に持ち越した助成金は、2021年度に予定していた蛋白質発現解析に使用する。
|
Research Products
(1 results)