2021 Fiscal Year Research-status Report
Study on new periodontal status test using GCF contents.
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20K09981
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
沼部 幸博 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (90198557)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 弘 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (30184683)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 好中球(PMN) / NETs / 歯肉溝滲出液(GCF) / LPS / 歯周病 / 歯周病検査 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯周病は、歯周病原細菌に対する宿主の免疫応答により発症し、臨床症状として、歯肉の炎症、歯槽骨吸収、付着喪失などを呈する慢性炎症疾患である。歯周病原細菌の侵襲に対し、初期の防御機構を担う好中球 (PMN) は、歯肉溝滲出液 (GCF) 中における免疫担当細胞の約 90%を占め、非特異的な免疫応答により歯周病原細菌の排除を行っている。 この PMN の機能として、細菌に対する遊走能、付着能、貪食能、殺菌能に加え、近年新たに好中球細胞外トラップ (neutrophil extracellular traps:NETs) という概念が提唱された。NETs はPMN から DNA、ヒストン、好中球エラスターゼなどの細胞内抗菌タンパクを含む網目状構造物が能動的に放出され、構造物による物理的細菌捕獲を経て、PMN 内の抗菌タンパクで微生物が殺菌される機構である。 炎症の現場である歯肉固有層の毛細血管から遊走するGCF中のPMNは、歯周組織内の様々な炎症情報が含まれることから、本研究では歯周病の成立や進行におけるPMNのNETsの役割を検討し、最終的には歯周病患者に対する歯周組織検査への応用への検討を目的とした。 本年度は、前年度で得たPMNの NETs 発現を同定する細胞膜非透過性核酸染色試薬 SYTOX Green染色手技を用い、歯周病の病巣部環境に近づけるためPMNを歯周病原細菌の主要なビルレンス因子である lipopolysaccharide (LPS) にて刺激し、PMNの NETs 発現誘導と、その際に生じる様々な生体防御機構に関する検討を行った。その結果、刺激条件によってPMNのNETsの発現を観察できたが、さらに歯周組織環境に基づいた様々な条件設定が必要なこともわかり、それらの課題に対して最終年度に向けてNETsを歯周組織の病態解析につなげるための検索を継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度はPMNにおけるNETs 発現を、細胞膜非透過性核酸染色試薬 SYTOX Green染色後にフローサイトメーター(FACS)を用いて同定する検索手技を確立した。すなわちNETsを人為的に発現させる phorbol 12-myristate 13-acetate (PMA) 刺激を行ったPMNに対し SYTOX Green染色後、FACSにてPMN細胞浮遊液に対するヒストグラムを作成、ゲーティングした細胞に対する NETs の発現測定に成功した。さらにその状態を共焦点レーザー顕微鏡観察において形態学的に確認した。 本年度は歯周病患者の病巣部に炎症が生じている環境を想定し、PMNをP. gingivalis 由来 LPS、コントロールとしてEscherichia coli 由来 LPS にて刺激し、その際のPMNにおけるNETsの発現状態を共焦点レーザー顕微鏡およびFACSで比較検討した。その結果、歯周病原菌の病原因子に反応して、PMNにNETsが発現することが示され、歯周病の病態形成においてPMNのNETsが何らかの役割を果たしていることが示された。 これらのことから最終目標である歯肉溝滲出液(GCF)中好中球に対するNETs検索の基本手技が順調に整いつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度および2年目の研究結果により、末梢血PMNにおけるNETs 発現をFACSを用いて同定する検索手技が確立し、その後歯周病の病巣部環境を想定してた歯周病原菌のLPS 刺激によるPMNに生じるNETs発現状態の検索から、最終年度に向けて遂行すべき、また修正すべき幾つかの研究課題が見えてきた。 今後は歯周病原菌のLPSの種類を増やして、菌腫によるNETs発現の違いを検索すると共に、歯周病原菌の生菌、数種類の炎症性サイトカインを用いたPMN刺激後のNETs発現状態も検討する。さらに、NETsの同定手技としてのFACS、レーザー走査型共焦点顕微鏡による検索にELISAを用いた解析を加え、細胞生物学的、形態学的、生化学的なPMNのNETs発現の変化の多角的検索も並行して進めて行く。余裕があれば既存の論文で報告されているNETs発現の同定手法を増やして、より精度の高いNETs発現に関する証明を行う。 そしてこれらの検索結果を基に、最終目標である歯周組織の環境である歯肉溝滲出液(GCF)中PMNにおけるNETsの発現状態の検索に移行する。具体的には過去に開発したGCFからPMNを採取する方法の確認を経て、健常者、歯周病患者におけるGCF中PMNのNETs発現状態を検索し、その状態から歯周組織の歯周病の病態を把握する検査方法に関して考察を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大のため学会出席、研究発表のための出張が国内、国外共に中止され、その分の旅費の使用がほとんどなかった(0円)。また、新型コロナウイルス感染拡大との関連は解らないが、海外からの購入を予定していた研究用の試薬が手に入りにくく、さらに研究機関のフローサイトメータが一時期故障していた時期があり、試薬代や消耗品の費用が予想より抑えられたためである。 次年度は所属機関の出張制限も緩和され、また学会も現地開催も増えているので、研究成果の発表、研究情報の収集などに旅費を使用する。また、研究の最後の仕上げのための消耗品・試薬代や論文作成に対する英文校正費用、論文投稿費用などで積極的に交付金を使用する予定である。
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